1月4日に行われた「第98回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会 クォーターファイナル」で、群馬クレインサンダーズを破り初のセミファイナル進出を決めた横浜ビー・コルセアーズ（以下・横浜BC）。7日には、Bリーグ第16節GAME1に臨んだ。ホーム、横浜国際プールで迎え撃ったのは、天皇杯のセミファイナルでも対戦する琉球ゴールデンキングス(以下・琉球)。終始リードを奪った横浜BCが67-51で勝利した。
横浜BC変革の中心で躍動し急成長を遂げる#5河村勇輝。日々進化し続ける要因を聞くと、2つの理由を挙げた。1つは、「自分の夢や目標である日本代表へ着実に成長を続けていかなければいけない。今年はワールドカップという経験したことがないレベルの大会がある。毎日、成長するにも時間が足りない」と語り、常に世界を目指して取り組むことが急成長の裏にはあった。さらに、「横浜BCで3シーズン目。これまで2シーズン、勝てない状況が続いた。ほとんど変わっていない今のチームメイトと苦しさを味わい、チャンピオンシップ出場という目標に向かって悔しさを晴らすシーズンだと思っている。僕自身も、やり返すリベンジのシーズン」と捉え、反骨心を力に変え臨んでいる。
オフシーズンの日本代表活動も大きなきっかけだった。得点する意識は、「ゲームを支配しコントロールするためにはアシストだけではだめだ」と日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチ(HC)からの言葉を受けたもの。「今に活きている」と語る通り、今シーズンの河村のプレーには変化が見られている。ただ、決して「スコアファーストになるわけではなく、相手に対し河村は点を取ることもできるぞというプレッシャーを与えること」がホーバスHCの意図。GAME1では、前半無得点だったが後半には13得点をあげた。またアシストは11本とダブルダブルの活躍でチームを勝利に導いた。「スコアに固執することなく、ベースはアシスト。チーム全体で作っていくことを意識し、バランスを取りつつ相手にプレッシャーをかけながら点を取っていきたい」と意気込む。まだまだ河村の進化は止まらない。
この日は、高校時代から長くともに戦ってきた1つ年上の先輩、東海大学でキャプテンを務めた#24松崎裕樹が横浜BCに加入後はじめてコートに立った。第2クォーター、河村とともに交代出場したが、交代の1分ほど前に青木勇人ヘッドコーチ(以下・HC)は河村に「裕樹と一緒に出すから」と伝えていた。松崎がチームに合流してからおよそ2週間。過密日程でまともにチーム練習をこなせていない。そのため、河村はできることは限られているであろう松崎に対し「積極的に空いたらシュートを打ってほしい」と伝えたという。松崎について青木HCは、「なかなか5対5の練習からチームルールを理解する時間がなかなかない中で、彼はとても準備をしている。セットプレーも自分のポジションについては理解をしていて、ディフェンスルールもとにかく質問している」と明かし、すでに信頼を勝ち得た松崎を河村に託していた。
学生時代からトップレベルで戦い、福岡第一高等学校時代の優勝経験を得て、河村の勝者のメンタリティーは大いなる武器となった。周りの選手にも影響を与え、勝負所で勝ち切ることができるチームへと変化を遂げている。横浜BCが目標のチャンピオンシップ出場を果たすのか注目だ。
そして、河村が見つめる高みの舞台。8月に開幕するFIBAバスケットボールワールドカップ2023、2024年に行われるパリオリンピックに河村が日本代表として出場し、日本バスケットボール界に新たな歴史を築いてくれるのではないかと期待が高まる。
文：木村英里
写真：Shinobu Mino
