
個々の成長からつくる新たなチーム、「強い川崎ブレイブサンダース」の復活へ
9月13日、神奈川県川崎市の東急ドレッセとどろきアリーナで、川崎ブレイブサンダースと長崎ヴェルカによるプレシーズンゲームが行われ、91-89と川崎が勝利した。試合後、桶谷大ヘッドコーチは、「(米須)玲音が試合終わりに、『目の前のことをやり続けることができた』と、昨日と今日の違いについて語ってくれました。まさにその通りです」と話し、「負ける心配をして、自分たちのプレーやパフォーマンスの質が3クォーターに落ちたり混乱したりしていましたが、今日はそういう時間帯がなく、少しリードされても目の前のポゼッションをどう凌ぐか、どうプレーするかに集中してくれました」と、前日の神戸ストークス戦との違いについて評価した。

8月の日本代表活動を終え、本格的に川崎のチームへ合流した桶谷HC。今シーズンのチームについては、ベテランと中堅、そして若手という構成を挙げながら、若い選手たちの成長がチームの鍵になるという。一方で、「昨日と今日、もったいないなと感じるシーンがたくさんありました。そこをどれだけ減らせるか。5対5のゲームをどれだけ上手くなれるか、どれだけ賢くプレーできるかというところが、すごく重要だと思っています」とも話す。


この日は長崎のジャレル・ブラントリーが不在だった。それでも川崎の選手たちのフィジカル面の課題は浮き彫りになっていた。
「ブラントリー選手がいなくて、この結果。これからアジア枠の選手も入ってきたり、長崎ももっと上げてきます。それに対して、簡単にスクリーンに引っかからないとか。今日の試合を見ていても、川崎の選手はかなり吹っ飛ばされていました。小さい体だからこそ、やらないといけないことがあります。ただスピードがあるので、そこは使いたいと思います」


ただ課題であるだけではなく、スピードには可能性を感じていた。そして、アジア大会に出場している3選手が戻ってきた後に、チームとしてさらに一段階上のバスケットを目指す。
「彼らが帰ってきてから、そのピースをしっかり使えるようになり、僕が川崎で目指している生産性の高いバスケットができるようになったら、本当に強いチームになるのではないかなと思っています」

津山尚大が向き合う「自分に一番足りない」ディフェンスとルーズボール
昨シーズンから川崎でプレーする津山は、開幕に向けて「一つひとつ、自分たちがやるべきことをやりつつ、個人としてもチームとしても課題を克服していければ」と話した。桶谷HC合流後は、チームとして戦うことを大切にしながら、それぞれの選手の持ち味も生かす練習が続いているという。
「チームとして戦うところは戦いますし、個人の良いところを常に尊重してもらって戦えています。泥臭いプレーやルーズボール、リバウンドを強調しながら練習しています」

津山自身も、桶谷HCから求められていることを明確に感じている。
「自分が一番足りないところ、ディフェンスやルーズボールの部分を強く言われているので、プレシーズンでも意識していました」
また、オフェンスでは持ち味を出すことを求められている。
「オフェンスの部分は思い切って、フィニッシャーになれる時は常になってほしいと。そして、この2試合はなかなかチャンスがなかったですが、玲音と(篠山)竜青さんがファールトラブルになった時に自分がコンボガードとしてやる部分もあると思いますし、なかなか(松山)駿と僕が一緒に出る機会はないですが、彼と一緒に出た時は僕がしっかりガードとして機能してほしいとも言われています」
求められる役割は一つではないからこそ、開幕までの2週間で突き詰めたいこともはっきりと見えている。
「オフェンスでは、チームで攻めることを強調したいです。ディフェンスでは、フィジカルにリバウンドなど最後までやり切ることを突き詰めていきたいです」


「インサイドが強いので、インサイドアタックしながら外のシュートも打てる、両方が強いチームになると思っています。トランジションの中にもインサイドを見つつ、質の高いハーフコートオフェンスができるのではないか」
津山は、今シーズンの川崎についてそう期待を込めた。
強い川崎の復活へ、選手の成長を支える菊地祥平ディベロップメントサポートコーチの存在
今シーズンから川崎には「ディベロップメントサポートコーチ」という新たなポジションが設けられた。就任したのは、昨シーズン、アルバルク東京で現役を引退した菊地祥平氏だ。

菊地コーチは選手としてのキャリアを川崎の前身である東芝ブレイブサンダースでスタートさせ、その後も長く第一線でプレーしてきた。指導者として川崎に戻り、選手個人のスキルアップや育成を専門に支えている。
篠山は、菊地コーチについて「川崎が強いチームに戻るために、最低限やらなきゃいけないこと」を教えてくれていると話していた。
「ディフェンスのプレッシャーのかけ方、ボックスアウトや手の使い方一つとってもそうです。そういうところからずっとワークアウトの中で指導してくれています。自然とスタンダードは上がると思います」


若い選手にとっても、その存在は大きいだろう。アジア大会に出場している山内ジャヘル琉人について、篠山は「成長していかないといけない。持っているものを最大限に生かすためにも、さらなる成長が必要な段階にある」と指摘していた。
「だからこそ、このタイミングで祥平さんが帰ってきて、ワークアウトの部分から付き合ってもらえるのはすごく彼にとって良いことだと思っています」

米須も、菊地コーチから学ぶ日々を送っている。
「昨シーズン引退されて、選手たちの気持ちを分かってくれている存在でもあります。祥平さんはディフェンスがわかりきっていますし、自分はディフェンスが得意ではないので、少しずつ学んでいます。祥平さんから言われたことはしっかり遂行してやろうと取り組んでいます」
米須は「祥平さんに聞きに行きます」と、積極的にコミュニケーションを取っていることも明かしていた。


余談ではあるが、菊地コーチについて話を聞いていると、篠山はこんなことも口にしていた。
「最前線で研ぎ澄まされていた鋭いトゲを持った菊地祥平を知っています。だからこそ、緊張感はすごくあります。祥平さんに呼ばれるビクッとなります(笑)」
これまで最年長の選手としてチームを引っ張ってきた篠山にとって、菊地コーチの加入は、また違った意味を持っているようだ。
「しばらく最年長の選手としてやってきましたけど、兄貴が帰ってきていい意味で緊張感があり、頼れるのですごく助かっています」

個々の選手がそれぞれの課題と向き合いながら成長し、桶谷HCが掲げる「生産性の高いバスケット」が形になった時、川崎はどんなチームへと進化していくのだろうか。開幕からの戦いに期待したい。


