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B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2024閉幕 ユース世代の育成に携わる指導者たち vol. 1 琉球ゴールデンキングスU15

B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2024閉幕 ユース世代の育成に携わる指導者たち vol. 1 琉球ゴールデンキングスU15

3月27日から31日にかけて東京体育館で行われたB.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2024。
31日に行われたファイナルは琉球ゴールデンキングスU15と横浜ビー・コルセアーズU15の対戦となった。最終クォーターで、最大12点差を逆転した横浜BC U15が初優勝を飾り幕を閉じた。

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今大会に出場していたベルテックス静岡U15の#13山田響は、今年2月25日、B2リーグ第23節 愛媛オレンジバイキングス戦でB2リーグ最年少出場を記録するなど、このカテゴリーの選手たちにも注目が集まる。
今大会を戦った選手の中からも飛躍を遂げる選手たちが数多く生まれることだろう。

琉球ゴールデンキングスU15 末広朋也ヘッドコーチ

そんなユース世代の育成に尽力する指導者を紹介していきたい。初回は、残念ながらファイナルの舞台で敗れてしまったが、準優勝した琉球U15の末広朋也ヘッドコーチ(以下・HC)だ。昨年の大会まで名古屋ダイヤモンドドルフィンズを率い3連覇を成し遂げた指導者である。

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自身としては4連覇がかかっていた今大会。「どっちに転ぶかわからない試合でした。相手を褒めていいゲームかなと思います。選手は全力でやったと思います」と悔しさを滲ませながら振り返った。
敗戦後、選手たちには「悔いを残すな。勝とうが負けようが自分がやりきったと思う日にしてほしい。必ず、今日の日を振り返ることがあるはず。その時に自分はやりきった、たくさんチャレンジしたと思えるような一日にして欲しい」と、選手たちに声を掛けた。

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本格的に現チームの指導を始めたのは今年の1月からだった。
「僕の力は本当にわずかで、それまで沖縄で彼らに関わった指導者や選手個人の力が大きいと思っています。その前提で意識させたことがあるとするならば、沖縄の土地柄や選手の気質から最後の玉際とか0.1ミリにこだわるとかそういうところが緩くなってしまいがちです。そこを頑張ろうよと背中を押す役割です」と、この短期間での指導を振り返った。
選手たちの性格や本質をわかっている。だからこその指導と助言を行うことができる。さらにB.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 3連覇を達成した指導者という肩書きと経験。末広HCの言葉は選手たちに強く響いた。

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「彼らは優勝したいと思って沖縄から出てきて、優勝を沖縄のファンに約束してきた。それだったらリバウンドを頑張らないと、玉際を頑張らないと届かないよねと。もともとそういうのはあまり好きじゃなくて華やかなものが大好きな子たちなんです。それでも目標がそこにあるならと、僕はチャンピオンを経験したことがある身なので、そういうことを伝えることができる特権を持っています。決勝まで進むようなチームがどういうチームなのかを伝えてきました」
そう日々の指導について明かした。

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指導理念と方針

将来、プロ選手や日本代表を目指している選手たち。U15の年代を育成する上で、「彼らに知ってることはたくさん伝えていますが、教わって伸びるような選手ではなくて自分で研究するような選手を育てたいので、彼らの好奇心をくすぐるような声かけ、言葉がけを意識しています。誰かがいるから成長するのではBリーグの選手にはなれないと思っています。どこにいても誰に教わっても、自分で成長させられる選手のメンタリティにならない限りあのレベルではプレーできない」と、末広HCは考える。

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琉球の選手たちはコート上で頻繁にコミュニケーションを取っていた。その点について聞くと、「それが特徴だと捉えてもらえたらすごく嬉しいです。練習の作りも基本的にそうです。僕が課題を解決するのではなく、僕が設定したものに対して選手がこうだよねとどんどん喋りながら、アンサーを出していくという練習の作りをしています。異なるチームカラーの相手に対して、みんながアジャストしながら試合をするのは、彼らがこの舞台で活躍できるためのひとつの鍵となります。指示待ちでは絶対にだめなんです。結局はコートの中で自分たちの信頼関係と、自分たちで答えを見つけたものをみんなでやるのが一番強い、バスケットの特徴です。ベスト8以上にはそれができるチームじゃないと上がれないんです」と、力強く語った。

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だからこそ悔いが残るのは、ファイナルでのこと。テーマは横浜BC U15のエース#32渡辺聖をどう止めるのかだった。
「選手たちがコミュニケーションを取り課題を解決するところに関して、足りてないと思う部分がありました。もうワンランク上のコミュニケーション、駆け引き、読みが足りなかったです。こういう守り方しようねで止められる相手ではなく、相手が嫌な間合いを出したり引いたりしないといけないのに一辺倒になり人任せになってしまいました。答えをコーチに求めるようになってしまって、僕としてはちょっと寂しいなと思うところでした。そこが良くなっていくといいかなと思いますし、僕も次に繋げていくことを意識します」と末広HC自身も新たな宿題ができた。

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そして逆転を許してしまった選手たち、大人以上にメンタル面は難しい。そんな時は「僕が感じていないことは言いません。そうでないと選手たちが本当の自分と向き合わないんです。流れが悪くなってきた時、いいディフェンスができていても得点を許しているのか、それとも修正が必要なのか。そこの課題を伝え、自分たちで乗り越えられるようにします。僕が言ったことをしていては選手に残りません。自分たちで選んだものが結果に反映されます。その選択を引き出してあげる、そして自分で背負え、逃げるな」と指導する。自発的に、自らの力で結果を導き出すことに重きを置く。そして選手たちは、この悔しさを糧に次のステージへと進んでいく。

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すごくいいものを持った選手たち。ただ出し切ることができないのはもちろん理由があった。「普段の私生活がちょっと緩かったり油断があったり。彼らのもともとの気質」と指摘していた。だからこそ今大会を通して、「『君たちの一番いい時を知っている。嘘ではなく、それが出たら目標にもしかしたら届くかもしれないね』と伝えてきた。選手それぞれがそのレベルに上がっていってる感じはありました。大会の中で各選手が僕の知っているベストなものを出した日があると思います」と、短期間の中でも選手たちのたしかな成長を感じてきた。末広HCのこの評価は、優勝こそ叶わなかったが選手たちにとってはうれしいことではないだろうか。

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4年連続のファイナル進出、もちろん自身の指導法にも確実に手応えを感じている。「僕が課題を解決しすぎない。子どもたちが自分たちで課題を解決できるように練習の作りから意識し、協力すること、喋り合うこと、それがやっぱり一番大事です。どうしても指導者は不安になり、やっている感を持ちたくなるものです。言い過ぎたり、作り過ぎたり。コーチが作ると全国大会のファイナルなどでは脆いです。選手が課題を解決する日々があればファイナルでも堂々と戦えます」と語り、方向性は悪くないと今大会を通しても実感したという。

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第二の日本代表 河村勇輝、そしてNBA選手の輩出を

今後は、「横浜ビー・コルセアーズ#5河村勇輝のような選手を育てたい」と話す。過去に日本代表のアンダーカテゴリー時代の河村と向き合った。河村は「コーチの考えていることを感じようとする力がすごくあります。教わったり伝えてもらったりして動く選手が多い中で、コーチの考えを感じ、さらに感じたことをチームメイトへコーチに分からないように伝えていく。コーチが苦労することがないような組織を作る一員になれる選手は、選手としてプレーヤー生活が終わったとしても、絶対社会に出ても重宝される人だと思います。だから、いつも彼を思い浮かべます」と明かす。

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そんな河村との時間は財産だという末広HCにとって、今後の目標はNBA選手を育てること、そしてアメリカに勝つこと。「小さいチームが大きいチームを倒すのが好き」なのだ。そのために「必要な要素、チーム作りを今ここで得るんだと思いながら20代を過ごしていました。30代はアウトプットしてみよう」と試行錯誤の日々。将来、末広HCの教えを受けた選手たちの中からNBAで活躍する選手が生まれ、そんな選手を擁する日本代表がアメリカ代表を破る日が来ることを楽しみにしたい。

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頂点には辿り着かなかったが、「彼らの一番いいものを見ること、彼らの思いを感じることができました」と柔らかな笑顔を見せた末広HCがとても印象的だった。

琉球ゴールデンキングスU15
https://goldenkings.jp/team/youth/u15_players/

文:木村英里
写真:佐渡一翔

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