上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己

上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己

 12月3日に始まった、第74回全日本大学バスケットボール選手権大会。通称インカレは、7日8日にかけてトーナメント1回戦2回戦が行われ、拓殖大学が大阪産業大学、大東文化大学と戦うなど熱戦が繰り広げられた。1回戦は、87-68で拓殖大学が勝利したものの、2回戦の大東文化大学戦は62-80で敗戦。3クォーターまでは拮抗していたが、大東文化大学の激しいディフェンスに苦しみ、突き放しを許してしまった。

 balltrip MAGAZINEでは、大阪産業大学戦、スリーポイントシュート5本を含む19得点、リバウンド8本、アシスト5本と大活躍を見せた#42益子拓己に話を聞いた。ポジションはスモールフォワード、キャプテンも務めた。

上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己
上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己

 1回戦終了後、今年からは「もちろん点数を取ることを意識しているが、キャプテンとして自分が入らなくても周りがどれだけ決められるのか。チーム状況によって、自分がどういう声かけをしたり、どういう役割を果たせるのか、試合や状況によってチームの良さを出すことが自分の役割だ」と語っていた。

上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己

 益子は、福岡県の祐誠高等学校出身。高校時代の成績は、県ベスト4が最高。代表選出などもなく決して有名な選手ではなかった。大学進学後にバスケットボールを続ける考えはなかったが、拓殖大学の池内泰明監督に声をかけられ今に至る。

 入学後、池内監督から「シューターで行く」と言われた。高校時代のポジションはパワーフォワード、スリーポイントをさほど打つことはなかった。1年次、拓殖大学の4年次には現在秋田ノーザンハピネッツでプレーする#22多田武史が在籍していた。「すごいシューターがいたので、(多田を)抜かないことには試合に出られない。その背中を見ながらこの人を抜けばという気持ちで自主練していた」という。入学直後から芽生えたシューターの自覚。現在では「自分の武器」とも言い切る。そこまで益子を成長させたのには2つの理由がある。

上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己
上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己

 1つは、ライバルの存在、東海大学九州の#23中村駿希だ。高校の同級生でもあり、1年次には第26回全九州大学バスケットボールリーグ戦でスリーポイント王。4年次にも第29回全九州大学バスケットボールリーグでも得点王、スリーポイント王に輝いた選手だ。「高校時代もすごくライバル視していた」といい、1年次からの中村の活躍が眩しく映った。「自分はベンチにいても試合になかなか出られないという状況が続いていた。絶対負けたくない」という思いを抱え「自分に喝を入れていたと思う」と振り返っていた。

上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己
上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己

 そしてもう1つの理由は、昨年の苦い思い出。昨年のインカレは、1回戦で天理大学に67-68と1点差で悔しい敗戦。この時、益子はラストショットを託されたが決めることができなかった。この時のことを「メンタルは本当に成長した。役割としては特に変わっていないと思うが、大事な場面で任されるようになった。しっかり自分で決めたり、ディフェンスが寄ってきたらパスでさばいたりできるようにもなった。もちろんまだまだ課題はあるが、点の取り方や周りを見ることは明らかにできるようになった」と自信を感じさせていた。

上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己
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 それでもインカレで勝ち続けることは難しい。2回戦では、40分フル出場するも勝利に導くことはできなかった。試合終了直後、膝に手をついたまま涙を流す姿があった。

上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己
上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己

 入学前には考えてもいなかった「上出来すぎる」4年間。「試合に出られるとも思っていなかった。試合で活躍できて日本代表にも選ばれた」。今年の春、はじめて3×3 U23代表候補合宿に参加した。さらに 9月、FIBA 3×3 U23 WorldCup 2022の日本代表に選出されている。成長とともに想像以上の時間を過ごした。
 そんな益子にとって大学のバスケットボールは、「引退した今だから言えるが、本当に楽しい。学生バスケというものが最後。仲間とのオフコートがすごく楽しかった」と良い思い出となりそうだ。敗戦直後。「もちろん悔いはある。でも4年前の自分からすると、よくやりきった」と自分自身を労った。

 大学バスケで活躍した選手の今後は気になるところ。「Bリーグの試合に出たい」という思いがある。さらに、「3×3でパリオリンピックを目指しながら、また一からがんばりたい」と夢を聞かせてくれた。近い将来、Bリーグに身を移しさらに成長した姿を見せてくれるだろう。そして、パリオリンピックなど最高の舞台で観客を沸かせるプレーを披露してくれたら嬉しく思う。

上出来すぎる4年間だった 拓殖大学 益子拓己
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文:木村英里
企画・写真:Rune




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