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B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉

B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉

 昨シーズンは悩みながらプレーを続けていた。所属していたB1リーグ名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(以下、名古屋D)で、怪我から復帰後思い通りに動かない自分の体をなかなか受け入れることが出来なかった。悩み抜いた末に今シーズン、環境を変えB2リーグで挑戦をすることに決めた。
 
B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉

 B2リーグ東地区首位を走るファイティングイーグルス名古屋(以下、FE名古屋)は、10月23、24日とアウェー(東京都・大田区総合体育館)でアースフレンズ東京Z(以下、東京Z)と対戦した。FE名古屋は怪我で#18相馬卓弥を欠く中、終始安定した試合運びで連勝を飾った。GAME2終了後、会見に臨んだ川辺泰三ヘッドコーチは「GAME1の反省を生かし、今日は入りから自分たちのバスケットボールを選手たちが表現してくれた。ベンチも全員が出られて良かった」と振り返った。対戦した東京Zのウーゴ・ロペスヘッドコーチは「3人の外国出身選手、2人のポイントガードは能力が秀でていて、バランスが取れている。完成しているチームで優勝争いをするだろう」と印象を述べた。

B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉

 今シーズン、FE名古屋はB1昇格のために大型補強を行った。昨シーズンB2リーグで優勝しB1昇格を果たした群馬クレインサンダーズから#12野崎零也と#41ブライアン・クウェリ。優勝経験者の存在は大きい。また、同じB2の熊本ヴォルターズからは2年連続B2アシスト王に輝いた#11石川海斗、山形ワイヴァンズで昨シーズンB2得点王の活躍を見せたアンドリュー・ランダルが加入。現在は戦線を離れているが昨シーズン佐賀バルーナーズでプレーしていた相馬は昨シーズンのB2スリーポイント王と、FE名古屋にはタイトルホルダーが集まった。

B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉
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B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉
B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉

 さらにB1の名古屋Dからは#21笹山貴哉を獲得。笹山を獲得した理由について川辺ヘッドコーチは「ポイントガード、シューティングガード、そしてボールハンドラーも出来る。バスケットIQも高い。瞬時にどんなセットが効果的かも判断出来るといつも思う。ディフェンスの強度など課題はあるが一級品だ」と語り、「チームに参加してくれて感謝している」と喜びを表した。
 笹山をはじめ石川や怪我で離脱しているが相馬などB1経験者が複数いる。また、同じくアシスタントコーチとして新たに加わったカルバン・オールダム氏は長く千葉ジェッツでアシスタントコーチを務めていた。コーチもB1強豪チームでの経験を持っているから心強い。そんな新チームについて指揮官は「スーパースターが集まった。個性が強すぎる」と笑っていた。

B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉
B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉

 そんな個性派揃いの集団の中で仕切りに声をかける選手がいた。新天地での挑戦となる笹山だった。試合後「大事な時間に切れてしまう選手がいる。リードしていてもう一撃与えれば試合が決まるところで、大丈夫だと軽い雰囲気になってしまう」とチームの課題を挙げた。GAME2では「メンバーを下げる前のワンステップが今までは出ていなかったが、今日はそこで5点10点取ることが出来れば本当に試合は決まる。そこを意識して声を掛けた」と振り返り、熱い選手が多い中で冷静にチームをまとめようと奮闘しているようだ。川辺ヘッドコーチも、個性が強いが故に「俺はこれがしたい、俺がこれをしたいと意見が出てくる。チームが一つになるための必然なコミュニケーションだと思っている。(笹山には)率先して喋って欲しい」と伝えている。

B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉
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 笹山にはB1のチームからもオファーはあった。「昨シーズンに怪我をして、試合勘もなかなか戻らず怪我も引きずってしまっていた」と言い、本来の自分のプレースタイルを取り戻すためにFE名古屋でプレーすることを選択した。「強いチームでプレータイムが限られた中で挑むのか、厳しく追い込まれた環境に身を置き高い目標に向けて主力として出場するのか」を考えた結果、「迷いなく出る方を選択した」と語る。今は「試合勘も戻ってきている」と言い、結果的に昨シーズンと比べて出場時間も増えチームから求められる役割も増している。

B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉
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 B2開幕当初は「ファウルトラブルに苦しんでしまった」と振り返る。「フィジカルの部分はB1の方が強いし、ハードに当たっても耐える選手が多い。B2で同じようにプレーをすると相手が耐えられずファウルを取られてしまうことがあった」と一つ一つ新たなステージに順応しているところだ。

 新たな仲間については「個性豊かな各々エースが集まった」からこそ、「厳しくなったら俺がやると1対1の勝負をしていた。今は我が強くなってはダメだとわかってきている」と感じている。ポイントガードとして「勝負強さを持っている選手たちが多いのは心強いし頼りたい。どれだけ気持ち良くプレーさせてあげられるか」とやり甲斐を感じている。
 

B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉
B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉

 今年3月に取材した際にはどこか苦しそうにプレーをしている姿が印象に残った。怪我前の自分と復帰後の自分のプレーの違い、やりたい気持ちと思うように動かない体を受け入れることに少し時間がかかりもがいていた。今は、怪我の箇所も良くなり、試合に出る度に「結果を残さなければ」とプレッシャーを課し、「B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見てやらなければ」とプライドと責任を感じながらコートに立っている。

B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉
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 苦しみ抜いた経験豊富なベテランが新天地で霧が晴れたように生き生きとプレーをしていることが嬉しく思えた。B2優勝、B1昇格がチームの目標だ。それについて笹山は「自信がある」と強く即答した。そこにはもう昨シーズンのように悩みながら言葉を選び取材に応える姿はなかった。近い将来、新たな仲間とともにB1の舞台に戻ってくるだろう、ふとそんな気持ちにさせられた。今シーズン、B1だけでなくB2もさらにレベルアップし熾烈な昇格争いが予想される。この移籍が間違いではなかったと証明するために、FE名古屋をB1の舞台へ導いて欲しい。

B1でずっとプレーをしてきた選手として常に上を見続ける  ファイティングイーグルス名古屋 笹山貴哉

文:木村英里
写真:オガワブンゴ

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