コーチが3人になると議論になる 福島ファイヤーボンズ

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 2022年の幕開け。福島ファイヤーボンズは16勝10敗で東地区4位につけていた。そして1月1日2日と東京都の片柳アリーナでアースフレンズ東京Zと対戦。結果は87-77、90-83と連勝し東地区2位に順位を上げた。B1昇格を目指す福島は、今シーズン選手補強に加えてスタッフの体制も厚みを増した。GAME1終了後、balltrip MAGAZINEは森山知広ゼネラルマネージャー兼ヘッドコーチ(以下GM兼HC)と今シーズンからチームに加わった栗原貴宏アシスタントコーチ(以下AC)に話を聞くことができた。

 今シーズン、「感情が出てしまいやすい」という森山GM兼HCはある挑戦をしていた。栗原ACが加わったことでHCとしての役割や負担に変化があった。「試合中は相手がどうしてくるか観察しながら、今試合中に起こっていることはAC陣に状況を把握してもらう。もう少し感情が一定でいられるようになりたいし、常に座って指揮をしていられるように」と心掛けている。

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それでも試合中には我慢できず立ち上がってしまうし感情が高ぶることもある。そんな瞬間、ベンチの最も端の席に腰掛ける姿を見ることもあった。「チームとしてやり切らないといけない時、ハッスルしきれていない時、スタッフは淡々と選手に何をしなければならないのかしっかりと伝えたい」と語る。

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ハーフタイム、選手がロッカールームに戻った後も福島のコーチ陣はベンチで話し込んでいた。その際「先にアシスタントコーチ陣から提案を受け、コーチ陣で後半の修正点などを共有する。そしてACから選手に指示し、HCは最後に総評的な話をして3クォーターへと入っていく」のだという。今シーズン途中から採用しているこの形は「コーチ陣の中でも何かを変え、より良くしていこう」と模索してきた結果だ。「より良い情報をシンプルに的確に伝えられるようトライしている」最中なのだ。

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 また試合中、選手もHCのもとへ駆け寄ったりAC陣のもとへ駆け寄ったりしていた。現在、佐野公俊アシスタントコーチ(以下AC)がオフェンス面をメインに、栗原ACがディフェンス面をメインに担当しているという。これまでは森山GM兼HCと佐野ACが二人で全てを担ってきた。そこに、かつて現役時代は必殺仕事人と呼ばれたほど求められた役割をこなせる選手であり、ディフェンスにも定評があった栗原ACが加わった。役割分担ができチームをより俯瞰で見られる場所に身を置くことができるようになった。

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 まだまだ自分の感情のコントロールには課題がある。全てを自分でこなしてきた分、人に任せることは簡単なことではない。後半戦に向けて、新年さらに目標と位置付けた。

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 もちろん栗原ACの加入は、スタッフのみならず選手にもチーム全体に変化をもたらしている。「彼の経験は、練習中もワークアウト中も、選手たちに今何をやらなければならないのか、選手としてのあるべき姿などを示すことができる。彼らにとってもすごく良いロールモデル。まだ選手の目線や気持ちも分かるコーチという加入は大きかかった。コーチが3人になると議論になる。2人だとお互いにそうだよねという会話で終わってきた。一つのトピックを新たな見方や考え方などより深められるように」なった。成長がお互いできる環境になりつつある。

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 栗原ACは就任からこの半年を「映像を作ったり、スカウティングしたり、佐野ACに教えてもらい分担しながらできるようになってきた」と振り返る。強みは「やはり経験をたくさんしてきた」からこそ、その時々のメンタルやしなければならないことを導き出せる。「正解とは限らなくても選手の気持ちはわかる」と探り探りながら選手たちに寄り添い続けている。
 選手の頃は、試合の前から気持ちを作り食事に睡眠にと気を配り気を張っていた。でも「今はやることがいっぱいあって寝不足でも大丈夫」と充実感のある表情をしていた。

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 コーチになってみると、かつて現役時代にヘッドコーチとして導いてくれた川崎ブレイブサンダースの北卓也ゼネラルマネージャーが「当時言っていた言葉の意味が今になって理解できることもある」と笑う。選手としては「どうしてあのように言うのかと疑問だった。でもコーチとして選手と向き合うと言いたくなる気持ちもわかる」という。コーチ目線でバスケットボールと向き合い始めた栗原ACが、この先どのようなコーチになるのか注目したい。一歩一歩コーチとして歩みを進める栗原ACにとって、B1へ昇格し共に戦った仲間と再会することは一つの目標だ。

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 B1昇格のために、後半戦欠かせないのはキャプテン#21菅野翔太の復調だろう。森山GM兼HCは「調子が落ちている。今、プレーの状況判断がチームと合っていない。シュートもあまり入っていなくて焦りもあると思う」と菅野の現状を語る。現在プレータイムは落ちている菅野だが「キャプテンでもあり、彼が必要。乗り越えてもらわないと」と指揮官も復調を待ち望んでいる。

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菅野は三遠ネオフェニックスに在籍しB1も経験した。「自分のパフォーマンスでどう乗り越えてくるか、待っている」と優しい眼差しで語っていた。必ず乗り越えると信じているからこその言葉だろう。地元・福島出身のキャプテン。「地元の選手がチームを昇格させることはすごくストーリーがある。今年は彼と叶えたい」と森山GM兼HCは語っていたがこれはファンも同じ気持ちだろう。さらには#30水野幹太や#11山内翼、栗原ACも地元出身なのだ。

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 栗原ACも地元への思いは強い。「地元のチームで携われるとは思わなかった。試合会場に行くと、学生時代の知人などが応援に来てくれている。これだけ選手も集まり、出身者が頑張ることで地元に元気を与えられるし、B1へ挑む機会はそう多くない。良い位置に付けていると思うし後半戦さらに巻き返していきたい」と力強く語ってくれた。

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 これまでコーチ二人三脚でチームを率いてきた。そこに地元出身の経験豊富なコーチがさらに加わったことで、より強固な体制が整った。すでに生まれている信頼関係を深めつつ、後半戦はこれまで以上に多くの勝利を重ねB1昇格へと突き進んで欲しいと思う。

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文:木村英里
写真:オガワブンゴ

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