長崎ヴェルカ　トライアウトを開催

文：木村英里
写真：オガワブンゴ

2021年4月10日、11日に、長崎市では長崎ヴェルカのユニフォームデザイン発表イベントと合わせてトライアウトが行われた。

現在、クラブと契約している選手は4名のみ。選手選考は引き続き行われている。そんな中で開催されたトライアウトには元Bリーガーや県内出身の選手ら８８人が参加した。

トライアウト前日に、GM兼HCに就任した伊藤拓摩氏に話を聞いた。
ポイントは「あなたはどういう価値をチームに提供できるのか？」だという。
勝ちに貢献する強化面では、スキルや得点力、ディフェンス力やリーダーシップなどを見る。

その一方で、岩下英樹社長は長崎県の中で「スポーツをはじめとしたいろんなものがビジネスとして動き、人が動き、そこからまた交流人口として人が増え、結果的に長崎って地方なのに頑張ってるよねとか、楽しそうだよねと思ってもらうことが最終ゴール」だとし、そこに必要なのが「人間味あふれる選手である」と語っていた。ただバスケットボールが上手いだけでも、勝たせられる選手なだけでもなく「ちょっとしたビジネスマンとして考えられるような人材が必要」なのだと説く。

「長崎の人に愛される選手になるか」
伊藤GMはこう表現していた。
チーム名の長崎ヴェルカも一般公募で決まった。ヴェルカには「Welcome」「Well community」「Victory」の3つの意味合いが込められている。岩下社長の言葉にあるように、バスケットボールで長崎を盛り上げ、地域創生を目指すことも目標の一つ。そのためには、チームも選手も県民に愛されることが大前提なのだ。

実は、長崎県出身のBリーガーは少ない。B2に上がれば、アンダーカテゴリーを持つことも求められる。伊藤GMは以前「若い世代が育つことも大切にしたい。」と語っていた。
トライアウトに参加する選手には「自分の価値が何なのかを見せて欲しい。」としつつも、まだ価値に気が付いていない選手も含まれることを踏まえていた。トライアウトではチームのメインとなる選手を探していくよりも発掘的な役割の方が大きいだろう。「今は無理でも2・3年後に12番目の選手になるかもしれない原石の可能性がある。」と伊藤GMはトライアウトへの期待を語っていた。参加する選手たちに、チームとしてどういう魅力を感じるのかが重要なポイントである。

今回、トライアウトに参加していた選手たちは様々な理由で挑戦をしていた。鹿児島レブナイズでプレーをしていたこともある高橋健太選手は、「Bリーグに戻りたいという気持ちがあった」と語る。また、長崎ヴェルカは「新しいチームで、この先、歴史のあるチームになるだろうと簡単に想像がつく。こういった場面に、結果がどうであれ立ち合えたことはすごく嬉しかった。」と感想を述べていた。

また日本体育大学で2020年度のキャプテンだった土居光選手は、「拓摩さんの下でバスケットをしたいという気持ちがあった。」と明かした。
かつてアルバルク東京で指揮し、アメリカのバスケットボールにも精通している伊藤GMの下で「もっともっと良いプレーヤーになりたい」という。伊藤GMの存在が「長崎に行きたい」と思う理由だった。

昨シーズン、琉球ゴールデンキングスに所属していた税所（さいしょ）寛選手は、コロナ禍でチームが決まらない難しさに直面した。それでも「気持ちの諦めがつかなかった。Bリーグの舞台でやりたいっていう気持ちが残っていた。長崎ヴェルカがトライアウトするというのがわかった瞬間に応募した」と語る。

決められた時間の中で、自分の力をどれだけ出せるのか、魅力をアピールできるのか。「トライアウトなので、即席のチームで自分の色を出すこととそのチームで連携を取るところが難しい。」と税所選手も語っていたが、それでも参加した選手それぞれが思い思いにプレーをしアピールをしていた。

チームとしては、7月をめどに12~13人の選手と契約していく考えだ。今回トライアウトに参加した選手の中から契約を見事に勝ち取る選手が現れるのかも楽しみにしたい。
長崎県のみなさんとともに作り上げるチーム。そんなチームに魅力的な選手が集まることを期待する。