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[FOCUS]長崎ヴェルカ 伊藤拓摩GM兼HC インタビュー VOL.1

古くは日本と大陸諸国との中継地として繁栄し、鎖国時代には唯一国内で貿易が行われたこともあり、西洋や中国などの影響を受けた独自の文化がある長崎。長崎の街を歩いてみるとどこからともなく、汽笛や教会の鐘の音が聞こえたりする。そんな街にバスケットボールがやってくる。

ジャパネットホールディングスが立ち上げ、2021-22シーズンからB3リーグ参入が決まった『長崎ヴェルカ』。GM兼HCに就任したのは伊藤拓摩氏だ。伊藤GM兼HCはアルバルク東京のHCとして、Bリーグの開幕戦という記念すべき試合で指揮を執りBリーグ初勝利を飾った人物である。
伊藤拓摩とはどんな人物でどんな思いを胸に長崎での挑戦を決めたのだろうか。

4月上旬、長崎の名所グラバー園にある旧自由亭で伊藤GM兼HCに話を聞いた。4回にわたりインタビューの模様をご紹介していく。

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小学生の頃に近所のお兄さんの影響でバスケットボールを始めた拓摩少年。マイケル・ジョーダンに夢中で「ジョーダンのトレーディングカードやビデオは全部集めた」という。大好きなジョーダンのビデオを見ながら、ある日、拓摩少年は掃除機をかける母にこう宣言した。

「俺、アメリカに行くわ」

小学生の頃から視線はバスケットボールの本場アメリカに向いていた。「日本にいたらこんなすごいプレーはできない」と感じ、アメリカ挑戦への思いは高まっていった。
伊藤GM兼HCは中学卒業後、本当にアメリカへ留学をする。当時のことを「ドキドキワクワクしかなく不安はなかった。賢い子は色々と考えるかも知れない。でも、英語が話せるようになるし友達もできる。バスケもできるしと良いことしか考えていなかった」と振り返る。
もちろん、実際には勉強についていくことも必死。苦労は多かったが、常に胸にあったのは両親の言葉や教えだ。「父のモットーは『苦労は金を払ってでもしろ』。すごく大変なこともあったがこれが父の言うことだと思い、これから学んで経験していこうというメンタリティーに早いうちからなれた」という。
伊藤GM兼HCの実家は三重県にある人気のうどん店である。子供の頃から、両親が一生懸命働く姿を間近に見てきた。そして留学のために決して安くない金額を息子の夢のために出してくれていたことも理解していた。「朝早くから夜遅くまで、お金がどう稼がれているのかわかるから、ちょっとでも無駄にしたくない」とアメリカでは勉学にも励んだ。

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アメリカで多くのものを吸収した少年時代。留学1年目を過ごしたのはオレゴン州ポートランドだった。 伊藤GM兼HCは通っているジムでのエピソードを目を輝かせながら教えてくれた。
「NBAのチーム、ポートランド・トレイルブレイザーズの選手が練習に来ていて、それを見られたことがすごくいい思い出。個人のワークアウトに来ていたのを釘付けになって見ていた。サボニスがこっちを見てウィンクをしてくれた。いつものファンサービスなのだろうけれど、あの優しそうな笑顔が記憶に残っている。もう22年前、年取りましたね(笑)」
※アルヴィーダス・サボニス・・・リトアニア出身。ヨーロッパ史上最高のセンターと呼ばれNBAでも活躍した。

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バスケットボールに夢中だった拓摩少年に、19歳のある日転機が訪れる。編入を経たため19歳になり「年齢制限でプレーができなくなった。マネージャーならチームに残ってもいい」という話をもらったことがきっかけで、そこからコーチの勉強を始めた。

でも伊藤GM兼HCにとって「コーチ」とはごく自然なものだった。
「日常には子育てなどコーチングする場があるが、4つ下に弟(滋賀レイクスターズに在籍する伊藤大司選手)がいて、両親が共働きだったから、子供の頃から知らず知らずにコーチングしていたのではないか」

弟である伊藤大司選手も兄を追って高校からアメリカへ留学した。NBAのスタープレイヤーであるケビン・デュラント選手(ブルックリン・ネッツ所属)とチームメイトだったこと、今でも親友であることはよく知られている。そんな大司選手に伊藤GM兼HCとのエピソードを聞くと「昔から1on1をよくやっていて、競争心を持たせてくれたことが一番ありがたい。アメリカから戻りプロになる時など場面場面でヒントとなるアドバイスをくれる」と語ってくれた。
かつて、大司選手が「俺は拓摩が大好きやから。尊敬している」とサラッと話していたことを思い出した。一番身近な弟にそんな風に言わせてしまう魅力が伊藤GM兼HCにはあるのだ。

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伊藤GM兼HCは「コーチ」という立場に出会い、大好きなバスケットボールをより楽しんだ。
「これが自分の生きる道と思った。水を得た魚だった」
コーチとして「どう成長するのかしか考えなかった」という日々。大学では、コーチとして役立つと考え心理学を専攻した。「自分の行動一つ一つ、その行動を取ることがコーチとしての成長に繋がる」と考えていたという。

コーチの面白さは「人のためになれる可能性があること」だと考える伊藤GM兼HCは、長崎ヴェルカで1年目はGMと兼任しHCとしても指揮を執る。気になるのはチームとしての現状だ。4月10日、11日に2度目のトライアウトも行われたが、現時点で選手はまだ4人しか決まっていない。

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スタッフについてもまだ発表はない。しかし「スタッフは自分が思い描いたメンバーが来てくれることになった。楽しみにしていてほしい」と自信を覗かせた。
「プロの世界だから、いつか終わりは来る。でも長崎に来て良かったと思って欲しい。長崎に来る選手とコーチがどうwin-winの関係を築くかが大切だ」と語る。

相手の立場になって考えてみる。その選手やコーチが長崎に来ることがメリットなのか、成長できるのか。そうでなければオファーを出すことも口説くこともしない。
果たして、どんなメンバーが長崎ヴェルカのスタッフとして顔を揃えるのか、この先どんな選手と契約が結ばれるのか注目していきたい。

次回以降、伊藤GM兼HCがHCとして記憶に残る試合やコーチ論、長崎ヴェルカの目標についてご紹介していきたいと思う。
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取材場所:グラバー園旧自由亭

文:木村英里
写真:オガワブンゴ

伊藤拓摩GM兼HC(長崎)インタビュー VOL.2
伊藤拓摩GM兼HC(長崎)インタビュー VOL.3
伊藤拓摩GM兼HC(長崎)インタビュー VOL.4

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