日本最高峰のリーグを楽しんでもらいたい 仙台89ERS 寒竹隼人

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 クリスマスゲームを渋谷区にある青山学院記念館でサンロッカーズ渋谷(以下・渋谷)と対戦し、1勝1敗で終えた仙台89ERS(以下・仙台)。第13節を終え、戦績は8勝15敗、東地区6位。#15渡辺翔太の左脛骨骨幹部骨折による離脱など、決して平坦な道ではないシーズン。#7澤邉圭太は、「チームが崩れない理由はベテランの支えがあってこそ」と話していた。B1リーグ昇格を果たし、少しずつ着実に成長を続けるチームを支える選手たちがいる。

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 クリスマスイブ、24日に行われた渋谷戦GAME1終了後。balltrip MAGAZINEは、そんなベテランのひとり、#12寒竹隼人に話を聞いた。渡辺の怪我というアクシデントは、「チームとしても仲間の精神的にも大きなダメージ」があった。しかし、チームで話し合う時間を設け、もう一度前を向くことができた。「ポジティブなエナジーとは何なのか」を各々考え、GAME1ではそれぞれの答えを表現し戦うことができた。「チームとして向くべき方向が定まった」と胸を張っていた。

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 コートに向かう仲間、一人一人に声をかけ、時には顔をのぞき込みながら熱い言葉をかける。「僕とソルジャー(#91片岡大晴)は、ベテランの日本人選手としてチームをポジティブな方向へ向かせることがひとつの仕事」だと考えている。試合中のいかなる状況においても、そのシチュエーション、相手に適した行動、言葉を選ぶことを意識している。「若い選手たちの表情から、迷っていると読み取ることができるように、常に顔色を見ている」という。献身的な姿勢は、前述の澤邉の言葉の通り、チームメイトへしっかりと伝わっている。澤邉は、寒竹や片岡から「言葉の大切さにも気が付かされた」とも話していた。

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 岩手ビッグブルズ、京都ハンナリーズ、島根スサノオマジック、大阪エヴェッサ、琉球ゴールデンキングスと、これまでさまざまなチームでプレーをしてきた、ジャーニーマン。今シーズン昇格を果たしたチームには、はじめてB1の舞台を踏んだ選手たちもいる。B1での経験がある寒竹は、「日本最高峰のリーグには当然楽な試合はひとつもない。でも、その高いレベルのバスケットを、苦しいだけではなく楽しんでもらいたい」と願う。「若手には希望を持ち、伸び伸びとやってほしい」と語るベテランからは、「成長を手助けする」ことへの充実感と後輩への愛情が溢れていた。

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 そんな存在は、コーチ陣にとっても頼もしいことだろう。ヘッドコーチ(以下・HC)を務めている藤田弘輝とは同じ年齢。藤田HCの言葉を、「僕が選手の目線で解釈し噛み砕いて」補説をするなど、コーチやスタッフ陣と選手の間で見事なクッション役を果たしている。時に、藤田HCから発せられる厳しい言葉。「愛情を感じるので、選手たちには誤解してほしくない」と、藤田が必要としているであろう声掛けや行動を起こす。「ヘッドコーチのためになればいい」とコーチ愛も熱い。

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 チームは「B1のトップチームとも、集中力を切らさずまとまることができれば戦える」と自信をつけつつある。川崎ブレイブサンダースや渋谷など中地区上位の相手に勝利をおさめた試合もある。ただ、「ちょっとしたほつれから、どのチームにも負けてしまう」危うさがあるのも事実。「いかに勝ち星をこぼさずに、ひとつの勝ちを掴みに行くかが大切。これからは崩れてしまう時間帯をいかに短くするか」を意識していきたいところ。「仙台らしく泥臭く、せった試合をものにしていきたい」と意気込んだ。

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 コートに立てる時間は限られている。それでもベンチから常に変わらず仲間のために声をかけ続けることは、プロの選手としては容易なことではないだろう。それでも、「コートに出ない試合があっても僕の存在感は発揮できる」と、求められる役割を理解している。どこにいても常に同じことをやり続け与え続けられる、そんな存在を目指している。「モチベーションは高くいられている。幸せなポジションにいる」と満面の笑みを見せていた。情熱的なベテランは、どうチームを牽引していくのか。注目してもらえたら嬉しい。

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文:木村英里
写真:オガワブンゴ




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