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アルバルク東京 安藤周人が見つめる先 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

アルバルク東京 安藤周人が見つめる先【後編】「バスケットボールボールの本質がわかってきた」

アルバルク東京(以下・A東京)#9安藤周人が語る今シーズン。後編では、安藤の成長や変化、自らの役割、そしてチームへの思いに迫る。

安藤は、「優勝」という目標を掲げたのみで「ナチュラルにシーズンに入った」と開幕当初を振り返った。
しかしその後、シーズンが進むにつれ、「自分の役割はチームをまとめることも必要。中堅として、キャプテンの#10ザック(バランスキー)さんだけに任せるのではなく、試合に出ている自分があとの4人をまとめないといけない。自分の調子が悪くてもいかに盛り上げるのか、気持ちの面を支えるのか今まで試行錯誤してきた。うまくいかないこともたくさんあるし、それでもチームのためにやれることは本当にたくさんあるんだなと。だから今年は自分の中で勉強になるシーズンだ」と感じるようになった。

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今年30歳になる。
さらに今シーズンを迎える前に長くA東京のエースとして牽引してきた田中大貴がサンロッカーズ渋谷へ移籍した。
伊藤大司ゼネラルマネージャーは、「チームを引っ張る、責任感というものが強く出るようになった」と評価していた。それは言葉の節々からも伝わってきた。

安藤は自身の変化について、「いろんな選手とコミュニケーションを取ることが増えたかなと思う。前いた名古屋ダイヤモンドドルフィンズの時よりもA東京に来てからの方が、自分がしたいことや次何をしようという提案など、話をすることが増えた」と語る。

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オールラウンドな活躍はチームに欠かせない。それでも「まだ自分も伸びるものがあるといろんな人のプレーを見て思う」と、まだまだ成長の途中。
そんな安藤は、最近になって「バスケットボールの本質がわかってきた」という。そこにはデイニアス・アドマイティスヘッドコーチ(以下・HC)の存在が大きい。
「スペーシングにしろ、ディフェンスのルールにしろ、戦術の中でしっかりと説明してくれる。本当に細かい。でも説明があるからこそわかりやすく理解ができる」と、名指揮官との出逢いが安藤をさらに飛躍させる。
「こういう時にこういうことがあるよ」という指摘や提案だけでなく、「自分たちの意見もすごく取り入れてくれるのでやりやすい」と、良い関係性が築かれている。
A東京加入初年度は、ルカ・パヴィチェヴィッチHCが指揮していた。「ルカの時も本当に色々な発見があり、ルカから学んだことがあったからこそ、今のコーチのもとで生きている部分もある。今になって、いろんなことを学べて本当に楽しいなって思う」、そう話す安藤の目は輝いていた。A東京への移籍が自身のキャリアにとって間違いではなかった。

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そんな安藤は日本代表をどう見つめているのだろうか。「正直今、代表についての余裕がないというか、呼ばれるまでがやっぱり難しい。前の代表では呼ばれていたが、トム・ホーバスHCになってから呼ばれないのは何かが足りない。今の代表に選ばれる選手にあって、選ばれていない僕には足りていないもの。そこを明確にしないといけないし、そこがやっぱり分からない限りはなかなか難しい。もちろん呼ばれていたのになと歯がゆいものはある」と、胸の内を明かしてくれた。
その上で、吉井やテーブスへの思いも口にする。「毎回頑張ってこいよと送り出している。あの二人には頑張って欲しいし、彼らのためにもシーズンの結果が大事になってくる。シーズンの結果次第で、そのままの勢いでパリへ行ける。僕自身も代表を見据えて頑張らないといけない。でもチームメイトのためにもシーズン終盤まで色々頑張らないといけない」と、仲間への期待と責任を持ち合わせている。キャプテンに匹敵する頼もしい存在だ。

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今シーズン、W杯後のバスケットボールの盛り上がりを肌で感じている。「日本代表のおかげもあるが、裏方のスタッフたちの頑張りもあり、毎回1万人近い観客を呼んでもらえているのは本当にすごくありがたいこと。そういった環境の中でやれることにまず感謝しないといけない。申し訳ないのは、ホームでの勝ちが少ない。残りのシーズン、ホームの試合でも、何としてでも勝率8割以上に頑張らないといけない。せっかく観に来てくれる人たちのためにも、みっともない姿は見せられない」と、まもなく再開するリーグ戦へ向けて意気込む。

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A東京は、20日には群馬クレインサンダーズ(以下・群馬)、23日24日には千葉ジェッツ(以下・千葉J)との対戦が控えている。群馬はバイウィーク前9連勝、さらに千葉Jは今月、東アジアスーパーリーグ「EASL」と天皇杯で見事優勝、勢いに乗るチームとの戦いになる。シーズン終盤に向けて、「今からが本当に一番しんどい時期。練習もなかなかできない。常にこの試合が終わったら水曜日、週末にまた試合がある。すぐ頭を切り替えないといけないのは難しいし、疲労もどんどん溜まっていく中で、しっかりと切り替えて次の準備ができるか。僕らはバスケットボールをやらせてもらえている身。週末や水曜日の夜、お仕事を頑張った後に今日飲むお酒が美味しいなとか試合が楽しかったから良かったと思ってもらえるように残りの試合を全力で戦いたい。一緒に戦って、応援してくれることは、しんどい時間帯を支えてくれていることだと本当に感じる。長いようで短い時間、一緒に戦ってもらえたらありがたい」と、ファンへの想いを交えながら覚悟を語ってくれた。ファンにとっては、試合に行くことを楽しみに日々を頑張っているとも言えるだろう。

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インタビューを通して、安藤から予想以上に危機感が感じられたことが驚きだった。それだけ優勝への強い想いと決意が見て取れた。何よりも、優勝に飢えている。
チームの主軸として支え、チームメイトを想いコミュニケーションを丁寧にとるだけでなく、クラブスタッフやファンへの思いやり、感謝を語る安藤はまさにA東京の顔になっていた。
シーズンの最後、頂点に辿り着くことができるのか、見守りたい。

文:木村英里
写真:濱田茉里オガワブンゴRune

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