長崎ヴェルカ クラブ創設1年目でB3リーグ制覇
4月23日、ついにその時が来た。今シーズンからB3リーグに参入した長崎ヴェルカ(以下長崎)が見事優勝を果たし、B2リーグへの昇格切符も手にした。
長崎は、盛岡タカヤアリーナで岩手ビッグブルズ(以下岩手)と対戦していた。拮抗する試合展開の中、岩手に4点リードを許し後半へ。
長崎は優勝マジック1。長崎の勝利、もしくは2位につけるアルティーリ千葉(以下A千葉)の敗戦で優勝が決まる状況だった。この試合より1時間早く試合が行われていたA千葉対ベルテックス静岡。その知らせはハーフタイムに届いた。
「A千葉が敗れた」
岩手で取材するメディア陣にも衝撃が走った。その瞬間、長崎の優勝が決まったのだった。試合前、伊藤拓摩ゼネラルマネージャー兼ヘッドコーチは「目の前の試合に集中しようと言ったが、どうしても優勝を意識したところがあった前半」だった。その後、後半は#5マット・ボンズ26得点、#34ジェフ・ギブス22得点、#32ハビエル・カーター20得点などの活躍により長崎は逆転、突き放しに成功。103 -87で勝利した。伊藤GM兼HCはハーフタイムに優勝の知らせを聞いたが、あえて選手たちには伝えなかった。ハーフタイム、改めて選手たちには目の前の試合に集中させ勝利を飾った。
コロナ禍で試合が中止になることもあった。時には約1ヶ月間、試合が出来なかった時期もありモチベーションを保つことの難しさも感じたシーズンだった。そんな中でも目標がブレることなく選手たちがそれぞれ成長を続けてきた。伊藤GM兼HCは「過程が大事だと話してきたが、目標を達成できて喜ばしい。選手たちが誇らしい」と称えた。
#4狩俣昌也は「素直に嬉しい。ここを目指し戦ってきて、1年間やってきたことが間違っていなかった」と笑顔を見せた。試合前は特に優勝を意識することなく試合に臨んだ。コロナ禍で「いつシーズンのラストゲームになるかわからない」という思いで戦い続けている。2019-20シーズンは新型コロナウイルスの流行によりシーズン中断を余儀なくされた。当時滋賀レイクスターズに在籍していた狩俣は、当時の経験から「毎試合ベストを尽くし長崎らしいバスケットボールをする」ことの大切さを学んだ。だからこそ試合後のロッカールームでは「多くのものを犠牲にしてきた分、みんな喜びを爆発させた」と明かした。
長崎がクラブ発足後、最初に選手契約を結んだのが#1松本健児リオンだった。この日、優勝を意識し自身が好きだという金髪姿で現れファンを驚かせたが、試合後には「ほっとした」と安堵の表情を見せ「このチームで優勝できてよかった」と喜びを語った。
シーズン開幕前から優勝候補として長崎の名前が挙げられていた。#14髙比良寛治は「プレッシャーはあったが、シーズンを通してチームが同じベクトルで毎日の練習に取り組めたこと、頼りになるベテランと若手の成長がこの結果に繋がった」と振り返った。そんなチームの成長とともに、ファンの数も増えていった。この日、長崎では複数会場でパブリックビューイングが開催されていた。「みなさんの応援が力になっている。フロントスタッフ含めパブリックビューイングを計画してくれた方々にも感謝している。応援されていることがすごく伝わってきた。期待に応えられたかなと思う。ありがとうございました」とファンへの想いを口にした。
シーズンは残り3試合。24日に再び岩手と対戦したのち、最終節は長崎県立総合体育館で岐阜スゥープスと対戦する。伊藤GM兼HCは「まだ明日の試合もあるのでしっかりとした形でシーズンを終えなければ」と気合を入れ直した。優勝の喜びに浸っている時間はない。髙比良は「ホームで決めたかった」と本音を漏らしていた。岩手での連勝も手土産に、ホームでファンに向けて嬉しい報告をしたいところ。「長崎の皆さんと祝いたい」と最後に語る指揮官の表情は弾んでいた。思いきり優勝を噛み締めるのは、もうしばらくお預け。残り3戦全勝を目指す。