藤井の時間 藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース)
川崎ブレイブサンダースは、4月3日、4日に豊橋市総合体育館で行われた三遠ネオフェニックス戦に勝利し、連勝を6に伸ばした。
GAME1終了後に、チームを牽引する藤井祐眞選手について話を伺うと、佐藤賢次HCはこんな言葉を語った。
「藤井の時間」
藤井選手のプレーは観る者を惹きつける。
初めてバスケットボールを観戦した方に聞くと必ずと言っていいほど「藤井選手がすごいと思った」と答える。
藤井選手の闘志あふれるプレーにはもちろん佐藤HCも太鼓判を押す。
「いつもコートに出すときは、彼の一番の武器であるエナジーを全力で表現することと、相手のエースPGを苦しめることを期待している。GAME1でもそこを期待してスタメンに起用した。さらに毎回こんなに点を取ってくれるとすごいなと思う(笑)」
GAME2で記録は途切れたものの、GAME1まで藤井選手は15試合連続で2桁得点を記録していた。
前述の「藤井の時間」。これはどういうことなのだろうか。
「コートを支配するというか、オフェンスでもディフェンスでも藤井の時間という雰囲気が出てきたと思う。」と佐藤HCは語る。
支配力を持つPGはリーグにどれ程いるのだろうか。
佐藤HCは「それはリーグを代表するPGにとって、とても必要な素質。勝つチームのPGが持つべきものだ。その力が藤井選手に付いてきた。もっとこれからも突き進んで欲しい。」と力を込めて付け加えた。
現在、29歳。ベテラン選手だが今なお成長を遂げている。日本を代表するPG篠山竜青選手がすぐ近くにいる。
佐藤HC体制前、藤井選手は篠山選手の控えだった。しかし最近は、試合ごとにスタメンが変わるチームスタイルの中で対応し活躍を続けている。
藤井選手には責任感というものも感じるようになった。チームの中心という自覚も芽生えた。
「(自身の)好調というよりチームがいい状態にあると感じている。その中で僕がアグレッシブにプレーしチームに影響が与えられている部分というのはあると思う。そこは継続したい。」
悲願の天皇杯優勝の後、リーグ戦に戻る難しさを痛感した。
「チームの雰囲気やシーズンへの入り方は難しさがあった。モチベーションの部分なども変わってくる。名古屋D戦は負けもあったが、もう一度地区優勝やチャンピオンシップ、Bリーグ優勝へ向けてチーム一丸でやろうとミーティングでも言われた。一人一人そこへの意識を向け直し、今はいい形でできている。」
チームが気持ちを新たに挑もうとした矢先、新型コロナウイルス感染症の影響により中止の試合が相次ぐこととなった。川崎も前節のアルバルク東京戦は中止を余儀なくされた。
「難しい中でも僕たちはやり続けるしかない。優勝に向けてやるしかないと思う。言い訳をせず、自分たちのやるべきことをするだけ。」
佐藤HCはシーズン開幕前、選手たちに「何が起こるかわからない。前例のないシーズンを我々は戦う。」と語っていた。
実際にその通り先が読めない状況になってしまった。
そんな中、試合に集中することは容易ではない。それを踏まえた上で、試合当日、佐藤HCは選手たちにこう伝えた。
「(ここ最近)バスケ界はコロナやパワハラなどネガティブな話が多くなっている。最善を尽くし良いプレーや試合で、少しでもポジティブな話題を届けよう。」
このような状況下でも優勝への意識は日に日に強くなっているようだ。
優勝のために決めたルールがチームにはある。その一つは各クォーター18点以内、トータル72失点以内に抑えようというもの。
「目標は達成できなかった。そういう細かい所、決められたことに対して一人一人が意識していれば失点は減らせた。そういう積み重ねが優勝につながる。チームとして徹底していければチーム力もより一層上がる。」と藤井選手は振り返った。
できることを一つずつ。プレーも感染対策もやり続けるしかない。
最後に、藤井選手に佐藤HCが語った「藤井の時間」という表現について聞いてみた。
「本当にノッている時間、僕が好き勝手できるような時間。(3月27日、28日に行われた)滋賀レイクスターズ戦も三遠戦も、ニック・ファジーカス選手たちが『行け行け!』と言ってくれる。そういう時は思いっきり行くようにしている。」
そう少し声を弾ませて笑顔を見せた。
そして「個人的には、最近フリースローが全然入っていないのでそこの確率を上げないと。」と反省点も挙げるあたりが藤井選手らしかった。
川崎のエースへと成長を遂げた藤井選手は、今一度気を引き締めBリーグ優勝を狙っている。