天皇杯クォーターファイナル川崎対長崎 〜ニック・ファジーカスをセミファイナル、ファイナルに連れていく〜
1月10日に行われた天皇杯クォーターファイナル。川崎市とどろきアリーナでは川崎ブレイブサンダース(以下・川崎)対長崎ヴェルカ(以下・長崎)が行われた。
川崎は6日に行われたアルバルク東京戦で負傷し左ヒザ関節内側側副靭帯損と診断を受けたニック・ファジーカスが天皇杯を前に全治6週間とクラブから再発表があった。そんなファジーカスもベンチから戦況を見守った。
試合は、4クォーターに長崎が逆転するとリードチェンジが続く展開となった。1点リードを許していた川崎は、試合終了間際、残り1.8秒で#25ロスコ・アレンがバスケットカウントをもぎ取り、64-62と見事勝利し、セミファイナルへ進出した。
この試合、#11増田啓介のプレーが繋いでいた時間帯もあった。試合後に話を聞いた。
「本当に最後の最後まで行方がわからない試合だった。それでも会場も一体となって勝利できたというのはすごく大きなことだと思う。試合前のミーティングで賢次さんが、スタートの選手が疲れたらすぐ変わって、ベンチから出てきた選手も全力でやって、疲れたらすぐ変わる。常にコートにいる選手が100%でやろうと話していたことを意識して頑張った」と試合を振り返った。
取材中、#20トーマス・ウィンブッシュが横を通り過ぎた。「オツカレ!」と声を掛け合っていた。この試合でも増田のパスからウィンブッシュがスリーポイントシュートを決めたシーンもあった。ウィンブッシュは日頃から積極的にコミュニケーションを取ってくれるのだという。
「本当にすごく性格が良くて、気さくに話しかけてくれる。僕は英語がタジタジなんですけど、なんとかジェスチャーで」と笑顔を見せた。
シーズン中にはなかなかプレータイムを勝ち取れない苦しい時期もあった。「やるべきことをやる。それしかないと思う」と向き合い続けている。心強い仲間の存在も大きいはずだ。
試合後、会見に臨んだ川崎の佐藤賢次ヘッドコーチ(以下・HC)は、「何も言うことありません」と勝利を噛み締めた。
勝利した瞬間、指揮官の目は潤んでいたように見えた。
「正直苦しい2ヶ月だった。勝つことは簡単じゃない、一つ一つ作ることがこれほど苦しいのかと思っていた。今日はいい試合ができて報われた。ニックをなんとしても次に進めたいとも思っていて、色々込み上げてきた」とその胸の内を明かしてくれた。
しかし課題も見つかっている。セミファイナルの相手は、昨シーズンのBリーグ覇者、琉球ゴールデンキングス(以下・琉球)だ。リーグ戦もファジーカス不在で戦わなければならない試合はまだ続く。この試合までも練習時間は多くなかった。
「今日の試合、64点しか取れていない。見つめ直さなければならないことも多い。引き続き前に進みたい」
川崎の挑戦は続く。
一方、敗れた長崎の前田健滋朗HCは、「長崎が関東で試合をする機会は多くない。たくさんの皆さんに来ていただき、素晴らしい環境で試合ができ嬉しく思っている。勝つチャンスはあったが、川崎の意地を見せられて負けてしまった。『THIS IS VELCA』という2023-24シーズンのスローガン通り、我々のスタイルは発揮できた。選手を誇りに思っている」と悔しさを滲ませながら振り返った。
敗因について#18馬場雄大は、「僕たちは出だしが悪く、自分たちで自滅していた。ゲームを通して練習してきたことが表現できなかった。川崎は徹底して言われたことをやる遂行力があるチーム。個人技で追い詰めたけれど、そう簡単ではなかった」とコート上でバラバラな動きをしてしまったチームを指摘していた。試合時間残り1分を切り、スリーポイントシュートを沈めるなど最後まで川崎を苦しめた馬場。それでも責任を感じながら、自身もチームも「ステップアップがまだまだ必要だな」とコメントした。
クラブ史上初めて、天皇杯クォーターファイナルを戦った今大会。「ヴェルカとして歴史を刻めたと思う」と前田HCは語った。リーグ戦、今後の長崎の更なる躍進も期待したいところだ。
川崎の佐藤HCはセミファイナルへ向け、「長崎の気持ちも背負って沖縄へ行きたい」と述べた。増田も、「琉球はものすごい強い力を持っている。全員でやって行くのでサンダースファミリーの皆さんも一丸となって、一緒に戦いましょう」と呼びかけていた。セミファイナルは2月14日、沖縄アリーナで開催される。