
古巣・川崎ブレイブサンダース戦で得た“2分46秒”と33歳の現在地 横浜ビー・コルセアーズ谷口光貴
5月2日、3日。横浜BUNTAIで、2025-26シーズン最終戦となる神奈川ダービー、横浜ビー・コルセアーズ対川崎ブレイブサンダースが行われた。残念ながら、横浜は連敗に終わり、ホームで迎えた最終戦を勝利で締めくくることはできなかった。
横浜の谷口光貴は、2015年、川崎(当時は東芝川崎ブレイブサンダース)に入団。プレータイムを求めて移籍したのは2019年のことだった。その後、滋賀レイクスターズ(現滋賀レイクス)、香川ファイブアローズ、熊本ヴォルターズ、ライジングゼファーフクオカと渡り歩き、2025-26シーズンに滋賀以来、B1リーグの舞台に戻ってきた。
最終節、プロキャリアをスタートさせた川崎との対戦を終えた谷口に、B1での挑戦となった今シーズンや、古巣との対戦を振り返ってもらった。

「B1のクラブからオファーが来るとは思っていなかったし、またとないチャンスでした。福岡からも残ってほしいというお話をいただき迷いましたが、今の年齢でチャレンジしないと後悔すると思ったんです」
現在33歳。多くの経験を積み臨んだB1の舞台は、決して容易なものではなかった。
「自分の中で、やれた部分と足りなかった部分。チームの中で、フィットできた部分とできなかった部分。それがはっきり出たと思います。求められる役割がどちらかというと僕が苦手な方の部分で、シーズン最後までなかなかやりきれず、それができないとB1では難しい」と冷静に自身を見つめていた。
「特に今のB1のレギュレーションを見ると、外国籍の選手についてマッチアップできるプレイヤーが求められているので、そこは僕自身の課題で、それができないと通用しない」と痛感した。
シーズンを通してもどかしい思いを抱えながら、自身とチームと向き合い続けた。それでも「チャレンジしたことはすごく良かった」と微笑む。


2分46秒。
この試合で谷口に与えられた時間だ。しかしその短さとは裏腹に、そこには強い思いが詰まっていた。
「結局川崎を出てから、対戦相手として川崎との試合に出られたのは、今回が初めてなんです」
滋賀時代は、なかなかプレータイムが伸びず、川崎戦でコートに立つことはなかった。その後はB2リーグでプレーを続けたため、川崎との対戦自体がなかった。今年4月、川崎のホームゲームにも帯同していたが、怪我の影響でコートに立つことはできなかった。ようやく訪れた古巣との対戦。GAME1では試合に出ることはなく、「1分でも2分でも 、たとえ20秒でもいいからコートに立ちたい」とGAME2を迎えた。
そして第2クォーター、その時はようやく訪れた。「自分の持ち味をもう少し出せていたら」と悔やんではいたものの「プレーできたことが僕にとってはすごく良かったです」と話した。

福岡在籍時、谷口を取材した際、こんなことを言っていた。
「川崎当時、ニック(ニック・ファジーカス、2024年引退)や(篠山)竜青さんから言われていたこと。当時はわからなかったことも、気が付けば今は自分が後輩に伝えているんです」
それは、「失敗してもいいからチャレンジすることが大事」だということ。「若い選手たちはプレータイムが欲しいからミスを恐れて、ミスしないようにする。僕も実際そうでした」
そんな時、篠山は冗談まじりに「お前、10ターンオーバーしてこい」と声をかけてくれたという。失敗しても大丈夫と思えた谷口は、その試合で結果を出すことができた。「ニックは厳しかかったけど(笑)、竜青さんや先輩たちの言葉がきっかけになりました。そうした影響力を持つことができれば、組織はもっと成長できる」と、今改めて感じている。

川崎戦、ベンチから仲間を鼓舞する姿がよく見えた。
「コート上もベンチも関係なく、みんなが勝つためにやるべきことをやりきる。それは川崎で学んだことで、ルーキーシーズンから4年間、川崎で過ごして染みついています。それが本当にいい経験だったなと思うし、他のチームを知ったからこそ川崎の良さが分かるというか。あのカルチャーは、なかなかそう簡単に築けるものではないと感じています」
だからこそ、横浜でも体現することを目指した。同じ年の安藤誓哉とは頻繁にコミュニケーションを取りながら、チームについて意見交換をし、新しい風を持ち込もうと模索を続けた。
安藤とはポジションも異なるため、それぞれの視線で働きかけたという。「誓哉はプレーのことが多く、僕は日常やバスケットボールに対する姿勢について。誓哉は一気に伝えるタイプで若手も気を遣ってしまう部分があります。だから、僕がクッションになって、日々の取り組みの大切さを伝えたかった。そうした積み重ねができなければ、試合で必ずボロが出ると感じていたからです。そこはやり切ることができました」
チームとして目標を達成することはできず、「選手たちの基準と僕らの求めるこうあるべきだというプロ選手の姿には乖離があり、難しい」と感じた。それでも試行錯誤して考えたことは谷口の力になり、「いい経験になった」と振り返った。

来シーズン、Bリーグは新たなステージへ。最上位リーグは「B.LEAGUE PREMIER」へと進化を遂げる。
これまでの経験を踏まえ、「谷口はこういう選手だというものを持ち続ける」こと。それがなければキャリアを伸ばせないと痛感している。
「今シーズン、後悔は特になくやれることはやり切りました。自分のプレイヤーとしての特徴と捉えて、それを今後、次のステージに繋げていけたらいいなと思っています」
インタビューの最後、「体が続く限り頑張ります」と笑って見せた。不安も見え隠れしていた頃、川崎のユニフォームに袖を通していた姿がふとよぎる。その姿は、かつてを知るからこそ、より頼もしく映った。
文:木村英里
写真:横浜ビー・コルセアーズ

