B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2020-21 QUARTERFINALS 琉球ゴールデンキングスvs富山グラウジーズ
2021年5月15日から17日にかけて沖縄アリーナではB.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2020-21 QUARTERFINALS琉球ゴールデンキングスvs富山グラウジーズが行われた。
このカードは、QUARTERFINALSで唯一GAME3までもつれ込んだ好勝負となった。
GAME1は4年連続西地区優勝を果たしている琉球がドウェイン・エバンス選手や今村佳太選手の活躍により初戦をものにした。しかし翌日、GAME2では富山グラウジーズの岡田侑大選手が3Qだけで19得点を重ねて勝利に貢献した。イーブンで迎えたGAME3。GAME1に続き今村佳太選手が27得点と躍動。4Q、富山の追い上げを受けるも逃げ切った琉球が勝利し、SEMIFINALS進出を果たした。試合後に藤田弘輝HCは「自分たちがやってきたことをやるしかないと思っていた。自分たちを信じて、オフェンスもディフェンスも我慢して自分たちのゲームプランをやり続けた結果だ」と振り返った。
balltrip MAGAZINEフォトグラファーが見たQUARTERFINALS〜琉球ゴールデンキングス〜
琉球が、富山のオフェンシブなジュリアン・マブンガ選手とジョシュア・スミス選手をどう止めるのか注目していた。しかし対策していても簡単には止められない。キム・ティリ選手ではパワーの面で破られてしまう。どうしてもエバンス選手とジャック・クーリー選手で対抗する時間が増えるがファウルもかさんでしまう。そんな際に、藤田HCがコートサイドで指揮をとるのを中断してでもベンチ後ろに下がったクーリー選手のメンタルケアを行っていた姿が印象的だった。
スタッツの部分では今村選手や岸本隆一選手がリーダーではあるが、オフェス力に長けている富山に対してインサイドの外国籍選手たちが身体を張って止めにかかる姿には感動さえ覚えた。藤田HCもGAME1終了後の会見で「対スミス選手は、クーリー選手一人に任せずみんなで。キーになるとことだから」と語っていた。一人一人ディフェンスの意識を高く挑む、まさにチームで掴んだ勝利だ。
balltrip MAGAZINEフォトグラファーが見たQUARTERFINALS〜富山グラウジーズ〜
残念ながらSEMIFINALS進出は果たせなかったが、Bリーグファンの心に大きな興奮と感動を与えたことは言うまでもない。今シーズンの富山は浜口炎HC就任、マブンガ選手の加入など開幕前から話題性抜群だった。シーズン中も、リーグトップのオフェンシブチームとして注目を集め続けた。2020年12月20日に行われた千葉ジェッツとの一戦は、ダブルオーバータイムまでもつれた大激戦となった。結果、富山は敗れるもBリーグ一番の名勝負と呼ぶ声も多かった。
しかし、チームは順風満帆で CHAMPIONSHIPにたどり着いたわけではない。元チームメイトの逮捕や、4月16日の宇都宮ブレックス戦で橋本晃佑選手が右アキレス腱を断裂してしまい離脱した。
このQUARTERFINALS、富山の選手達が背負っていたものは計り知れない。マブンガ選手の出場時間はこの3日間、40分・36分・38分。スミス選手も40分・38分・38分。彼らはほぼ休みなくコートに立ち続けた。プレーで貢献するだけでなく、若い選手も多いチームの中で仲間を鼓舞したり声を掛け続けていた。
そしてGAME3の4Q、勝負がほぼ決まり交代を告げられコートを去る時だった。SNSでも大変話題になったが、ファインダー越しに見ていても胸が熱くなった。4方向全てにお辞儀したマブンガ選手。そのあまりにも綺麗なお辞儀はまるで時が止まったようだった。
これほど熱い試合の中で、試合中のパフォーマンスで魅せるだけでなく本当に素晴らしく尊敬に値すると感じた。
そんなマブンガ選手と共に戦った若い選手たちの成長も目を見張るものがあった。積極的に最後の最後までゴールにアタックする姿には心が震えた。試合時間残り15秒、富山は4点差にまで追い上げ、琉球にとっては脅威であった。あの瞬間、あのコートに立っていたことは選手として相当な財産になるはずだ。富山はマブンガ選手とスミス選手だけじゃないと示した彼らは、この経験を糧に、この悔しさを忘れずもっと貪欲にプレーをし更にリーグを代表する選手へと成長していくだろう。
浜口HCは「残念ながら負けてしまったけれどトータルで考えればいいシーズンだった。この仲間とこの舞台で3試合できたことは、非常に楽しかった。できればもう少し…もう一つ先まで行きたかった」と悔しさをかみしめていた。
敵味方関係なく、富山グラウジーズには心から大きな拍手を送りたい。そんな素晴らしいチームでゲームだった。
balltrip MAGAZINEフォトグラファーが撮影した沖縄アリーナ
撮影された写真を見た時に、ライターは今までとは違う感情を抱いた。かっこよく美しく切り取られた瞬間の写真が、今まで彼らが撮影してきたBリーグの写真の中で最も美しく綺麗だったからだ。まるで4Kのようだと感じた写真たち。
今回は、フォトグラファーに沖縄アリーナでの撮影について聞いてみると、Shinobu Minoは「観客席が暗く照明はコートにフォーカスされることで、撮った時の背景が暗くなり、選手を引き立ててくれます。格好良さが普段の3倍増しになります。 NBAを体感できている気分で緊張感を持って撮影しました」と振り返った。
balltrip MAGAZINE編集長兼フォトグラファーのオガワブンゴも「かなり撮りやすい。光量が強いので陰影のある写真が撮れます。客席からでも撮りやすく感じるのではないか」と語った。
ついに誕生した夢のアリーナは、バスケットボールの魅力をより際立たせる舞台なのであろう。多くの試合を撮影してきたフォトグラファーも独特の空気感、緊張感を感じるアリーナ。
またオガワブンゴは「試合を見た体験、コートに立った体験など『体験』という価値が非常に高い、中毒になってしまうようなアリーナでした」とも語っていた。
そのような舞台で、 CHAMPIONSHIPが行われることの素晴らしさ。GAME1終了時、敗戦したものの富山の浜口炎HCも「素晴らしい会場でプレーできた。すごく楽しかった」と感想を述べていた。
そのような沖縄アリーナで、琉球はSEMIFINALSを再び戦うことができる。迎えるはQUARTERFINALSでシーホース三河を破った千葉ジェッツだ。西地区のプライド、念願のBリーグ制覇をかけ東地区の強豪と戦う。千葉も悲願の優勝を誓っているだけに、今回も熱く激しい戦いとなるだろう。敗れた富山の浜口HCは「東地区の帰化選手がいる3チームに勝って上まで行って欲しい」と琉球にエールを送った。
文:木村英里
写真:オガワブンゴ、Shinobu Mino