このチームには勝ちたい選手はいるが我が強い選手はいない ファイティングイーグルス名古屋

このチームには勝ちたい選手はいるが我が強い選手はいない ファイティングイーグルス名古屋

 ついに掴み取ったB1リーグ昇格の切符。ここに辿り着くまでは長い道のりだった。
このチームには勝ちたい選手はいるが我が強い選手はいない ファイティングイーグルス名古屋

 5月13日14日と名古屋市にある中村スポーツセンターで行われたB2リーグプレーオフセミファイナルで熊本ヴォルターズを迎え撃ったファイティングイーグルス名古屋(以下FE名古屋)。
 連日、熊本の#25ジョーダン・ハミルトンと#8LJピークをしっかり抑え連勝。ファイナル進出を決めると同時に来シーズンのB1昇格を決めた。

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 GAME2終了後に「本当によかった」と安堵の表情を見せた川辺泰三ヘッドコーチ。2017年にアシスタントコーチに就任、2019年からヘッドコーチとしてチームを率いている。5年目を迎える今シーズンも「メンバーが変わってもオフェンスもディフェンスもそんなにシステムは変わっていない」と語る。コーチとして積み重ねてきたものを「選手たちが上手く表現してくれた」成果だという。今シーズン、「連敗をしていないこと、後半に強いこと」がその証明だと大きな手応えを感じている。
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 これまでもB2リーグの上位チームに名を馳せながらB1リーグのライセンスが交付されず悔しい思いをしてきた。しかし4月12日、改善要求事項付きではあるもののB1ライセンスが初めて交付された。悲願のB1がグッと近付いた。
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 今シーズンの補強に際しては、昨シーズンのB2タイトルホルダーやB2優勝チームで活躍した選手、B1で長くプレーを続けてきた選手も獲得した。個々の強みが大きな分「自分が主役で」という思いがプレーに出てしまうことも少なからずあった。川辺ヘッドコーチは「ロールプレーヤーを経験していない選手にどう理解してもらうか」などの課題に選手ととにかく会話をし向き合い続けた。「1対1でもみんなとも。食事に行ったり」もした。結果「選手たちが主体となりB1で戦えるチームを目指してくれた」ことを指揮官も喜んだ。

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 #11石川海斗はチームメイトについて「このチームには勝ちたい選手はいるが我が強い選手はいない」と語る。レギュラーシーズンの各部門のスタッツリーダーを見てみても、全体1位であるFE名古屋の選手がトップにいないのはその表れだろう。時に自分を出すこともバランスを取ることもできる選手たちが集まっていた。

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 そんな石川にとっては昨シーズンまで在籍していた古巣との対戦だった。セミファイナルを前に、一緒にやってきた選手たちを「蹴落とさなければファイナルへ進めないこと」に対してネガティブな気持ちを少なからず持っていた。「自分が在籍した2年間で昇格が叶わなかった」からだ。ただB2という舞台で戦い続けることは自ら選んで来たこと。「Bリーグと言うのならB1もB2もB3も盛り上がるべき」という考えのもと、B2リーグを牽引する存在としてあり続けた。ただ「年齢的にB1へもう一度チャレンジしたい」とFE名古屋へ移籍。連日、かつての仲間とプライドをかけて戦い、その結果掴み取った昇格。それでも石川はいたって冷静だった。「ここがゴールではない。まず一つの課題をクリアしただけ」とファイナルを見据えていた。

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 レギュラーシーズンも圧倒的な強さを誇ってきた。プレーオフもファイナルまで無敗で勝ち上がった。それでも満足していない選手がいた。#21笹山貴哉だった。GAME1、コート上で一際気持ちを前面に出し気迫溢れるプレーを見せていた。要所要所ガッツポーズも飛び出し、その姿からは闘志が溢れていた。「相手を凌駕するため」に誰より仲間を鼓舞し声を掛け続け、倒れた選手に真っ先に駆け寄り手を差し伸べていたのは笹山だった。

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 今シーズン、本来の自分のプレーを取り戻すためにB2リーグでの挑戦を選んだ。「今シーズンも怪我をしたことは悔しい」としつつも、「B1B2の違いを外から見て気が付いたものがあった」と語る。来シーズン、再びB1でプレーする権利を得たものの「チームはまだB1レベルにないと感じている」と厳しい。そして自らにも「プレーレベルをB1レベルから絶対に落とさない」と厳しくしてきた。目指していることややるべきこと、本来の自分を取り戻すという点では、ファイナル進出も果たした段階で「90点ぐらい」とかなりの高評価。あとは自らがチームを牽引し頂上に導くだけ。FE名古屋での挑戦という選択肢が正しかったと証明する笹山の表情には自信が溢れていた。

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 石川が語る通りB1昇格は一つ目の目標を達成したに過ぎず、「B2優勝」というもう一つの目標を成し遂げなければならない。ファイナルは5月20日から仙台89ERSと対戦し優勝を争う。会場は名古屋市枇杷島スポーツセンターとホームの後押しを受けることが出来る。川辺ヘッドコーチは「最高の景色を共有する」とコメントを残した。

文:木村英里
写真:オガワブンゴ

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