川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青

新生・川崎ブレイブサンダースがついにお披露目となった。
9月14日、川崎市とどろきアリーナでは、プレシーズンゲーム「川崎ブレイブサンダース対宇都宮ブレックス」が行われた。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

今シーズンから、イスラエル出身でチェコ代表を初めてFIBAW杯で6位に導くなどしたロネン・ギンズブルグヘッドコーチが就任。ニックネームはネノ。外国人指揮官を招聘したこともクラブにとっては新しい挑戦である。さらに昨シーズンをもって日本代表でも活躍したニック・ファジーカスが引退するなど、チームは大きな変化のシーズンとなる。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

試合は、スコアこそ77-97と点差がある敗戦となったが、ネノHCは「自分たちは新しいチームなのでやらないといけないことが多いことは歴然とした事実です。日々積み重ねていくしかありません。リーグ屈指のチームとの試合で課題も見られましたし、何をやらなければならないのかが明確になったはずです。その相手に1、2クォーター主導権を握られても、粘り強く離されず追い続けられたことは今日の成果です。自分たちの目指すバスケットボールが少しは見せられたと思います。ロッカールームでは選手たちに、ディフェンス面など修正は多いけれど良い方向に進んでいるから信じて続けていこうと話しました。若いチームな分、伸び代しかありません」と振り返った。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

宇都宮とのプレシーズンゲームに限らず、既に非公式でBリーグの各チームと練習試合を行っている。改めてBリーグ、日本のバスケットボールにどんな印象を持ったのか聞いてみた。
「レベルは上がっていると思います。代表レベルでは、私は中国やフィリピンで見てきましたが、年々良くなってきていました。日本はフィジカルなバスケットボールのスタイルなのだなと思っています。選手も私も、そこにアジャストしないといけないですね」
そう語り、さらに「プレシーズンゲームにもかかわらず、これだけ多くの方に駆けつけていただき感謝しています。プレシーズンでここまでの盛り上がりは、日本のバスケ熱を感じました」と感想を述べた。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

新体制について、今シーズンもキャプテンとしてチームを率いることになった篠山竜青はこう話す。
「リズムも強度も練習も180度変わりました」
ハードだという練習によって「げっそりしています」と笑ったが、野﨑零也らも昨シーズンに比べると引き締まった印象を受ける。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)
川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

そして外国人コーチ陣や選手も多く入れ替わった今シーズン。ここまでの変化は篠山にとって初めてのことである。そんな今が「楽しい」のだという。
現在36歳。キャリアの終盤に差し掛かり、このオフは「自分のキャリアとして川崎というクラブに残したいものってなんだろう」と見つめ直す時間になった。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

「例えばプレー以外のところで、試合が終わった時に勝敗に関係なくきちんと挨拶をするとか、ファンのみなさんへ感謝を伝えないといけないとか逐一口うるさいおじさんとして、どういう態度でやってもらいたいのか、川崎はどういうクラブなのかを伝えたり説明したりする時間が増えました。これから、東芝時代からいる選手たちが築いてきた文化の中で残したい文化を見つめ直して伝えていくことを改めてやらなければいけないです。でもそれが楽しいし、そういうことに積極的に話を聞いてくれて納得して行動してくれる選手が揃っています」

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)
川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

長く在籍する選手が多いチームだった川崎。東芝時代から大切にしてきたもの、守らなければならないものがたくさんあるはずだった。決して疎かにしていたわけではないが、昨シーズンはチーム内のコミュニケーションにも課題があったように思う。篠山もキャプテンとして苦しんだシーズンだった。残念ながらオフシーズン、バスケットボール以外の話題でクラブの名前が世の中に発信されることもあった。在籍する選手たちにとってもファンにとっても誇らしいクラブであるために再生の第一歩。「本当の意味で、このチームに残したいものやもたらしたいものと向き合うシーズンになります」と、これまで以上にキャプテンとしての責務は重い。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

今シーズン、期限付き移籍で加入した小針幸也は早速持ち前のスピードを披露し会場を沸かせた。スピーディーな展開の全員バスケを目指す川崎にとって、小針の成長と活躍は必要不可欠だろう。篠山は小針のことを「今はネノさんから期待されている分、たくさん注文をつけられていますが、必死にしがみついているところだと思います」と話していた。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)
川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

川崎が求めるスタイルは、昨シーズン小針が在籍していた長崎ヴェルカと比較的似ている。その中でも「違いがあるディフェンスの守り方やヘルプの位置、オフェンスでもただ速いだけでなくセットプレーのコールやコントロールしないといけない部分や、リズムの緩急」について、ネノHCから細かく指示を受けているのだと教えてくれた。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

川崎の移籍をきっかけに、「アウトサイドのショットを成長させたいです。そしてスピードを生かしたトランジションなどハイスピードのバスケットボールに貢献したいと思います」と話す。
地元神奈川県出身の選手。
「家族も見に来やすくなりました。もっと頑張ろうと思います」
今シーズン、どんな飛躍を遂げるのか注目してほしい。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

昨シーズンまでチームに君臨していたファジーカスという大黒柱はもういない。
だからこそネノHCは「全員で埋められるか、チームバスケが大事です。全選手がチームに貢献を」と語る。新生・川崎のシーズン開幕を楽しみに、そして今シーズンを見守りたい。

川崎というクラブに残したいものとは何か 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

文:木村英里
写真:オガワブンゴ

関連記事一覧