大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ

12月19日、福島ファイヤーボンズ(以下・福島)はエンリケ・スニガスーパーバイジングヘッドコーチとの契約を双方合意の上で解除すると発表。新たにチームを託されたのは栗原貴宏氏。アシスタントコーチからヘッドコーチ(以下・HC)に昇格する形で現在は指揮を執っている。地元福島県郡山市出身の36歳。現役時代には日本代表でもプレーした。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ

12月20日に行われた栗原HCの初陣アルティーリ千葉戦、23日に行われた越谷アルファーズ(以下・越谷)戦GAME1と連敗。24日には越谷とのGAME2に臨んだ。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ

前半、2点リードで折り返した福島だったが、後半に入ると越谷の攻撃に苦しみ、最大19点のリードを許した。栗原HCはタイムアウトで、「(試合時間)残り5分で一桁にしよう」と声をかけると選手たちは「ペースをもっと上げよう」「プレッシャーをかけよう」と話し合っていたという。福島は、残り19.4秒でついに同点に追いつくと、最後に#88グレゴリー・エチェニケが押し込み83-81と見事逆転。栗原HCは初勝利を飾った。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ

試合を振り返りながら栗原HCは「本当に選手が頑張ってくれました」と目を細めた。同点に追い付いた際には、「痺れました。でも残りの時間を考えて冷静にならないといけない。勝ち越した瞬間もまだわずかに時間が残っていたので、俺はみんなの輪に入れず」と、興奮しながらも次の指示を考えなければならないHCならではのジレンマを早速味わった。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ
大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ

インタビューは「本当にほっとしています」から始まった。ロッカールームへ引き上げていく際の安堵の表情が全てを物語っていた。
この試合、序盤から選手たちのエナジーも高かった。HC交代という状況下にも、「元々選手同士はすごく一つになっていました。それでもなかなか勝てない時には、自分でエナジー出してやらなきゃと思ってもどうしてもついてこない、僕も選手だったからわかります。だから、前向きな言葉を掛けたりするようにしていて、いかに試合で盛り上げていけるかをすごく考えています」と栗原HCは語る。練習時やタイムアウト間の前向きな言葉も勝利に繋がった要因の一つだろう。
「様々な状況の中でも結果が全てかなと思っていました。すごく選手は自信になったと思います」と笑顔を見せた。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ
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「コーチをやって3年ちょっとくらい、まだ早いなというのが正直なところ。しかもシーズンの途中は難しいなと感じていました」と、今回のHC就任の打診があった際の思いを明かす。不安がなかったわけではない。自身の経験と実績、様々な戦術などもっと蓄積してからという思いもあった。それでも断る選択肢はなく、腹を括った。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ
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「(チームの)良い面は本当にチームが一つになっている。選手もスタッフも。しっかりコミュニケーションをとっていて全員が仲良く、良い雰囲気です。選手もコーチ陣の言うことをしっかりやろうという姿勢で話を聞いてくれて、コート上で表現してくれるのでコーチとしてはすごくやりやすい」という。その中で、自身はコーチとして仲良くなり過ぎないように線引きをし、選手に寄り添い過ぎずに丁寧にコミュニケーションをとっている。
現在は、「まずは、オフェンスもディフェンスもベースのところがまだない印象なので、シーズン中だからあまり詰め込みすぎないよう配慮しながら」取り組んでいる。「基本はディフェンスだと伝えていきたい」という栗原HCのもと、どのように築き上げるのか注目したい。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ
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劇的な逆転劇での記念すべきHC一勝目。記憶に残ることだろう。「本当に選手に感謝してます。ロッカールームに戻ったら、選手たちがウォーターシャワーで迎えてくれました」とうれしそうに語った。
「まだ一勝しただけでこれからどうなるか分からないけど、シーズンが終わった頃に、良かったと思えるようにやっていきたいです」
栗原HCの挑戦は始まったばかりだ。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ
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対戦相手であった越谷の安齋竜三HCが、以前宇都宮ブレックスで指揮を執っていた際に、栗原HCが選手として所属していたことがあり、縁のある間柄。連戦を終え安齋HCは、「僕もシーズンの途中からHCになり、その大変さは経験したし重圧もありました。それでも今日の試合では、自分たちのバスケットボールを信じて最後まで戦っていて、ディフェンスからアグレッシブでした。越谷は負けてしまったが、(栗原HCにとって)この一勝はすごく大きい。自分のバスケを信じながら突き進んでくれたら、必ずいいコーチになるはず」と、エールを送っていた。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ

地元のクラブのために覚悟を決めた。コートや選手を見つめる眼差しは、すでにHCそのものだった。
チームの勝利に「本当に楽しかったです」と喜ぶ栗原HCの笑顔は輝いていた。自身にとってもチームにとっても、そして会場で熱い声援を送り続けたブースターにとっても忘れられない一日に、そして最高のクリスマスプレゼントになったに違いない。

大逆転劇でヘッドコーチとして初勝利を飾る 福島ファイヤーボンズ 栗原貴宏ヘッドコーチ

文:木村英里
写真:オガワブンゴ

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