あいつのために、あいつが帰ってくるまで、全力で 福島ファイヤーボンズ 菅野翔太
2勝4敗で第4節を迎えた福島ファイヤーボンズ(以下・福島)は、10月25日に千葉ポートアリーナに乗り込みアルティーリ千葉(以下・A千葉)と対戦したが、残念ながら80-98のスコアで敗れた。
9月27日、#0エリック・マーフィーとの契約解除、10月19日には#30ロバート・ボリックとの契約解除が発表されるなどなかなか波に乗り切れなかった福島。さらに追い討ちをかけるように、23日に行われた青森ワッツ(以下・青森)戦で、#33林翔太郎が負傷。右足関節開放性脱臼と診断された。その後、チームドクター立ち会いのもとで整復手術が行われたことも発表された。これには、選手たちも動揺を隠せなかった。
エンリケ・スニガスーパーバイジングヘッドコーチ(以下・SVHC)は、「林は、チームの鍵となる選手だったので痛手だ。ただ、僕らがハードにプレーをしていることを彼は誇りに思ってくれているはず」と試合後に語り、選手たちには、「自分たちは何もできないが、林のことを思って、必ず彼を胸にプレーをしよう。林が常にコートで見せてくれていたハードなプレーを自分たちがやり切ろう」と、声をかけた。
そして#21菅野翔太は、「みんなショッキングな出来事だったので、それぞれが深く話したわけじゃないが、林のために、林が帰って来た時に気持ちよくプレーができるような環境を作ろう」と選手たち同士で話したことを明かした。結果的には点差が離れた敗戦となったが、「試合終了まで全員が本当にインテンシティ高くプレーをしていた。次の試合につながる良いゲームができたかなと思う」と振り返った。
菅野は試合開始直前、ベンチに置かれた林のユニフォームに手を当てていた。さらに、青森戦では涙を流す姿があった。「林にどう声をかけていいか分からなかった。僕もプロになって初めてというくらい涙を流した。怪我した気持ちは本人にしか分からない。ただ、ブースターのみなさんの励ましや、川崎ブレイブサンダース時代の先輩や後輩、いろんな選手が林の人柄の良さを知っていて、みんな声をかけてくれている。本当にあいつのために、あいつが帰ってくるまで、全力で戦いたい」と、強く語った。
チーム状況は苦しくとも、菅野は、「今プレータイムが少ない選手たちにはチャンスであり、出ている選手はよりステップアップしないといけない。林が戻ってきた時には、進化したチームになっている。ポジティブに捉えて、全員が進化していくという意識を持ってやっていけば、今は負けが重んでいてもどんどん勝てるチームになっていける」と、信じている。
会見の中でスニガSVHCは、林について、「回復し強く戻ってくると信じているので、祈るしかない、願うしかない。今、彼に言えることは、戻ってくるときに強くなってくることをわかっているので、できるだけリカバリーし早く戻ってくることを願っているし、それしか考えられない」と、改めて語った。今後も厳しい戦いが続く林に、仲間の想いはしっかり届いていることだろう。
そして、チームとしてそんな林に対して恥ずかしい試合は見せられない。次の戦いは28日。静岡県にある沼津市総合体育館でベルテックス静岡に挑む。A千葉敗戦後、指揮官は選手たちに「顔を上げなさい。小さなターンオーバーやセカンドチャンスポイントや、オフェンスリバウンドなどできていなかったところをやり切ろう。きっとチームは乗り越えて強くなる」と勇気付けた。仲間を思う強い気持ちと覚悟が、菅野の言葉からはひしひしと伝わってきた。なんとしても、この苦境をチーム一丸で乗り越えてもらいたい。