[FOCUS 長崎ヴェルカ] 松本健児リオン インタビュー VOL.1
長崎県に誕生したバスケットボールチーム「長崎ヴェルカ」。
契約選手第一号となったのは、松本健児リオン選手だ。
縁もゆかりもない土地だった。しかし松本選手は「しっくりくる」と語った。
初めて訪れた場所は地元・横須賀と似ていた。海のある街 、特に佐世保は米軍基地もあり共通点も多い。
バスケットボールとの出会いは、小学生の頃だった。姉に続いて始めたことがきっかけで「シュートを打つことがただ楽しかった」。子供の頃は当時NBAで活躍していたデニス・ロッドマンやベン・ウォーレスに憧れた。「自分とプレータイプは全然違うんだけど」と笑っていた。
日本代表選手も多く輩出している強豪・北陸高校(福井県)出身。3月にFIBA殿堂入りとなった佐古賢一氏(バスケットボール男子日本代表AC)もOBの一人だ。「中学時代、北陸高校の練習へ行った時に佐古さんがいらして一緒に写真を撮ってもらった」そうで、「最近その写真を見返して改めてすごいなと感じた」という。
多くの先輩たちを尊敬しているが、中でも近くの先輩として名前を挙げたのは千葉ジェッツの藤永佳昭選手。現在も連絡を取り合う間柄で「僕が1年生の時に3年生だった藤永さんは、B1の千葉ジェッツというチームでプレーをしていて近いけど遠い存在」だという。長崎ヴェルカとの契約が決まった際にも「おめでとうと連絡をくれた。OB戦もやりたいねなんて話している」そうだ。
大学は名古屋経済大学に進学。北陸高校で試合に出られていたわけではない。大学でバスケットボールを続けるつもりはなかった。「留学をしたいな」と思っていたこともあった。そんなある日、名古屋経済大学から推薦が届いた。
「自分たちの代が入学して1〜4年生全て揃う新しいチームだったから試合に出られるかなと思った。大学4年間バスケットボールを頑張って、その先はまた考えようと名古屋経済大学進学を決めた」
大学3年生まで「プロになる」なんて一度も意識したことはなかった。実は就職活動をしていて商社などを受けていた。
2016年9月22日。国立代々木競技場第一体育館で行われた開幕戦「アルバルク東京 vs 琉球ゴールデンキングス」をテレビで観て初めてプロを意識した。
三遠ネオフェニックスと練習試合をした時に「自分の調子がとても良くて、プロでもできるかもしれない」と漠然と感じた。インカレで結果を出せたこともあり、西宮ストークスから特別指定強化選手の話が届いた。「チャレンジするのもありなんじゃないか」とプロの世界に飛び込んだのだ。
Bリーグの舞台でプレーする選手たちが輝いて見えた。「とにかくかっこいい」そう感じていた。自分もそこに立てると興奮した。
しかし、プロの世界はそう生易しいものではない。Bリーグのコートに初めて立った時のことをこう振り返る。
「西宮はプレーオフ争いをしていた時期だった。1分ぐらいのプレータイムでも周りが見えなかった。準備もできていなくて自分が甘かった。シュートも打てるところで打てずに終わってしまった。」
ほろ苦いデビューになった。それでもBリーグの観客の声援を受けてプロになったことを実感した。
「子供がリオン選手!と声をかけてくれて嬉しかったし、プロだなと思えた」
しかし残念ながら特別指定強化選手の契約満了。「プロになって早速プロの厳しさを知った」苦い記憶だ。
2017−18シーズンはバンビシャス奈良での挑戦となった。「またプレーできる嬉しさを感じるのと同時に、自分はもっとできるという自信もあった」と前向きな気持ちに切り替えての新たなチャレンジだった。それでもなかなかプレータイムを掴み取ることができず、「なぜだろう」と自問自答を繰り返した。
「腐らず誰かのせいにせず、常に自分にポイントを置いて準備しようと考えていた」中で、当時のジェリコ・パヴリセヴィッチHCが成績不振により解任になり、石橋晴行選手兼ACが指揮を執るようになった。松本選手にもチャンスとなり徐々にプレータイムを伸ばすことができた。「とても勉強になった一年だった」と振り返る。
それでも契約を継続させることは簡単ではない。「奈良からオファーはもらえていたが納得できるものではなかった」と明かす。新型コロナウィルスの流行で各チームは苦しい経営を強いられることになってしまった。松本選手は結果的に交渉が決裂してしまう。「どこまで行っても、プロの世界はビジネス。自分のプレーとお金の部分は割り切って考えなくてはならない」と痛感した。
プレーしたくてもできない苦しさ、悲しさは計り知れない。
バスケットボールから離れた時間、よりNBAやBリーグを観るようになった。NBAは趣味、ファンとして観られる。好きなチームは自身が生まれた街の人気チーム、ロサンゼルス・レイカーズだ。でもBリーグを観る時はファンとして見ることなどできない。
「自分が今コートに立ったらどんなプレーをするのか。B1もB2も対戦する可能性が高い選手たち。試合のイメージをしている」
試合を観れば観るほど、プレーできないもどかしさはますます払拭できなくなったのだった。
※次回は松本選手が長崎ヴェルカにかける想いについて伺っていく。
取材場所:グラバー園
選手プロフィール
#1
出身校:名古屋経済大学
出身地:神奈川県
生年月日:1994年5月30日
身長(cm):183cm
twitter:@91_kenji
instagram:@kenji_leon_91
クラブプロフィール
HP:https://www.velca.jp/
twitter:@n_velca
instagram:@n_velca
Youtube:長崎ヴェルカ公式Youtube
「ヴェルカ」には、
①Welcome
②Well community
③Victory
の3つの意味をかけています。V・ファーレン長崎のように長崎で親しまれるクラブとなり、長崎らしい良い文化を取り込みながら、それと同時に地域創生を目指してほしいという想いを込めています。