誰かに矛先を向けるのではなく、みんなでひとつに 仙台89ERS 青木保憲 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

誰かに矛先を向けるのではなく、みんなでひとつに 仙台89ERS 青木保憲

2025年、仙台89ERSはアウェーでの戦いで幕を開けた。

1月4日、5日に川崎市とどろきアリーナで行われた川崎ブレイブサンダース対仙台89ERS。GAME1は82対61と勝利したもののGAME2は71対77と敗れ、1勝1敗で終えた。

仙台の顔として前向きな振る舞いを見せたい 仙台89ERS 青木保憲 balltrip MAGAZINE(ボールトリップマガジン)

GAME1の試合後、落合嘉郎ヘッドコーチは次のように振り返った。
「自分たちで流れを作り、粘り強く泥臭くプレーして勝てたことは自信になるゲームだったと思います。僕らは試合に勝って学んでいきたいです」

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今シーズンから就任した落合HC。白鷗大学男子バスケットボール部のヘッドコーチを務めた後、地元に戻り6年間アシスタントコーチとしてチームを支えてきた。仙台をよく知る落合HCだが、プロチームで指揮をとることは初めてだった。指揮官としての挑戦に加えて、選手も昨シーズンから半分以上入れ替わるなど、今シーズンの仙台には大きな変化があった。
「戦術に対して遂行力の足りなさは感じていますが、試合をするたびに課題が明確になってきています。コミュニケーションを取りながらうまくいかない部分を修正し、勝つことで自分たちの自信につなげていきたい」と落合HCは語り、仙台の粘り強くハードなディフェンスを武器に戦っていく姿勢を示した。

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そんな落合HCが信頼を寄せているのが、キャプテンとして率いる青木保憲。川崎戦では仙台の特徴であるディフェンスの強度を高くすることを意識したという。
「年末の試合(12月29日長崎ヴェルカ戦)はシュートが入る、入らないに関わらず、チームで決めたディフェンスの考え方を持ち続けられたことが勝因でした。川崎戦でもチームメートには絶対にディフェンスをぶらさずにやろうと伝えました。試合前も試合中も言い続けました。今日の試合では僕だけではなく、他のガード陣もウィングの選手も全員がよく戦えたと思います」と振り返った。
青木はこの日、スタートから出場。相手のターンオーバーやバイオレーションを誘うディフェンスで、今シーズン7勝目に貢献していた。

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ここまで7勝21敗で東地区8位に沈む仙台。2024年最後の試合、ホームで11試合ぶりに勝利したが、勝利が遠のいていた期間は長かった。青木はこう振り返った。「試合に勝てないと本当にきつい。自分たちがやってきたことが正しいのかが分からなくなります。その中で、もう1回ディフェンスのマインドを持ち続けようというところと、オフェンスもシンプルに自分たちが信じているものをやろうと言い続けました。試行錯誤もありましたが、少しずつ身になり始めたかな」と感じている。

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チームの状況が悪い時は練習前にハドルを組めず、ミスを誰かのせいと責任転嫁するなど、バラバラになりかけていた。青木はミーティングのたびに「誰かに矛先を向けるのはやめよう。みんなでひとつになろう」とひたすら鼓舞し続けた。キャプテンとして前向きにチームを引っ張る姿勢がようやく実を結び始め、11試合ぶりの勝利に繋がったのだろう。「キャプテンである以上、仙台の選手は誰なのかと問うと僕が見られる立場だと思う。常にできているかと言われるとそうではないですが、前向きな振る舞いをチームメートにもブースターにも見せ続けたい」と常に考えている。連勝することは簡単ではないが、今後もチームを牽引し続ける。

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とどろきアリーナはプロとしてのスタートを切った思い入れの強い場所。今シーズン最初で最後の古巣との対戦、会場には川崎在籍時のタオルを掲げているブースターの姿も見られた。
「川崎との対戦は本当に楽しみです。間違いなく僕の礎になっていて、とどろきアリーナはあたたかくて迎え入れてくれる場所。ただ、やるからには絶対勝ちたいし、僕がどれだけ成長したのかを川崎のファンの皆さんにも見せたい」と試合に臨んだ。試合後には「すごく楽しい40分でした」と充実感溢れる表情が印象的だった。

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「ベンチ裏には仙台に住んでいる方がたくさん来てくれていました。新年の遠征は、すごくお金がかかりますよね。その時間を僕たちに費やし一緒に戦ってくれるのは当たり前じゃないなというのを感じています。みなさんのために勝利したいです」
2025年、チームや日頃応援してくださる方々への責任と覚悟を胸に、青木と仙台の挑戦は続く。

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取材:川戸望里
写真:オガワブンゴ
編集:木村英里

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