REPAINTを託された新指揮官 福島ファイヤーボンズ 佐野公俊ヘッドコーチ

『REPAINT』を託された新指揮官 福島ファイヤーボンズ 佐野公俊ヘッドコーチ

 ずっとコーチ畑で歩んできた。今シーズンからヘッドコーチとして福島ファイヤーボンズを導く佐野公俊氏。九州産業大学卒業後、2年間母校でアシスタントコーチを務め、その後は5年間は九州産業大学バスケットボール部監督として後輩を率いた。学生バスケのコーチとして指導を続けた後、2012年、当時のbjリーグへ。宮崎シャイニングサンズのアシスタントコーチ、ライジング福岡、青森ワッツと歴任。2015年から昨シーズンまでは福島ファイヤーボンズのアシスタントコーチを務めていた。そして今シーズン、ヘッドコーチに就任。新たな立場でチームを導くことになった。

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 10月1日2日と、開幕節は宝来屋郡山総合体育館に佐賀バルーナーズを迎え撃ち戦った。初戦こそ84-77と勝利したものの、GAME2では74-54と大敗。思い通りのスタートとはならなかったがついに新たな戦いが幕を開けた。

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 実はballtrip MAGAZINEでは、開幕前に今シーズンの目標や課題などを伺っていた。昨シーズン、チームは初めてB2プレーオフへ進出した。残念ながらクォーターファイナルで仙台89ERSに敗れたものの、チームは確実に成長し経験を得ている。その上で今シーズンは補強にも力が入った。サンロッカーズ渋谷からジョシュ・ハレルソンを、広島ドラゴンフライズからはグレゴリー・エチェニケとB1で活躍する外国籍選手を獲得。プレシーズンゲームから2選手は存在感を示していた。高さも厚みも増した。しかしそれだけで勝てるわけではない。強力なインサイド陣は武器ではあるが、「日本人選手も含め全員で活躍していくバスケットボールをしたい」と語る。

REPAINTを託された新指揮官 福島ファイヤーボンズ 佐野公俊ヘッドコーチ
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どこでも点が取れる外国籍選手を軸に「みんなでもっとアタックしたり、スリーポイントシュートをもっと打ったりしなければならない。昨シーズンは足りなかった」と課題は明確だった。福島は8月、最初のプレシーズンゲームで川崎ブレイブサンダースと対戦した。まだまだ始動したてというタイミングではあったものの、69-106と大差での敗戦となった。相手はB1の常勝チームであったが、「日本人が点をとっていた」ことも点差に繋がっていたのは事実だった。試合後、「うちはなおさら日本人のサイズもない。もっとアタックしたりボールキックしたりしなければ」と一つ一つ挙げる姿が印象的だった。40点近い点差、「シーズンのスタートとしてもファンの皆さんは不安に感じたかも」と語っていたが、新指揮官の表情はどこか清々しかった。「いい見本があった」と得るものが確実に大きかったからだ。まず「気持ちを出し切ること、やり切る強さ」を身につけていくと明言していた。

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 そしてついに迎えた開幕戦は1勝1敗。佐賀戦後、「もっと選手たちの良さが引き出せるはず。戦術も起用も全員で意思疎通できるようにしたい。ベンチとコートで認識の齟齬があった。ディフェンスのコミュニケーションミスなど、無くさないといけない。指示をもっと出さなければならない点などがあった」と振り返った。GAME1で敗れたチームは当然、翌日は集中力も高く別のチームのように臨んでくる。その集中力や強度を上回らなければならないと改めて痛感した。もちろん開幕連勝を逃したことは悔しいが、「GAME1で自分たちのいいところは出せた。連日出さなければいけない難しさがあり、負けを受け止めて次節に向かわないと。先は長い。1つ1つ修正していく」と前を向いていた。

REPAINTを託された新指揮官 福島ファイヤーボンズ 佐野公俊ヘッドコーチ
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 佐野ヘッドコーチを支えるのは元日本代表、2020年に引退した栗原貴宏アシスタントコーチ。コーチとして長く選手たちと向き合ってきたヘッドコーチと、最近まで現役として活躍していたアシスタントコーチのコンビはお互いに無いものを持っている。昨シーズン、同じアシスタントコーチとして栗原とともに戦った。「僕は大学までしかプレーしていないし、プロを経験していない。プロ目線からも見る栗原は新鮮」だったという。「僕が言わなくても彼が伝えてくれている」と阿吽の呼吸だろうか。「2人で相談してやっていく。栗原の存在が助かっている」と既に良い信頼関係が生まれている。

REPAINTを託された新指揮官 福島ファイヤーボンズ 佐野公俊ヘッドコーチ
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 #5友利健哉は「アシスタントコーチの時も個人のワークアウトを見てもらっていた」し、アウェーゲームでは佐野の部屋を訪れ「一緒にスカウティングの映像を見て内容を共有してもらっていた」という。身近で佐野を見てきたからこそ、誰よりも佐野の思い描くバスケットボールを理解している。「各選手の役割を明確にシンプルに」している。チームとしてもまだ構築段階。「まだ理想にはほど遠いが、お世話になった方がヘッドコーチになったので今シーズン、昇格を目指す手助けをしたい」と語っていた。チーム一丸、新指揮官を支え突き進んでいく。

REPAINTを託された新指揮官 福島ファイヤーボンズ 佐野公俊ヘッドコーチ
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 「REPAINT」という今シーズンのスローガン。B1昇格へ歴史を塗り替える。福島のプロスポーツチームにはまだトップリーグに所属しているクラブがない。福島ファイヤーボンズが塗り替えたいところだ。チームとしては連勝記録や勝率などどれほどのものを塗り替えられるだろうか。福島で新たなスポーツの、バスケットボールの文化を作り上げるため、掲げた目標のため、チームとして土台作りから始めている。

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今シーズンは長崎ヴェルカ、アルティーリ千葉と昨シーズンB3から参入1年で昇格を決めた2チームもライバルに加わった。また降格もある。「戦っていけると思う。一つ一つ積み上げたい」と自信も見せた。「B1昇格、勝たなければというプレッシャーはある。楽しみながら1試合1試合やっていきたい」と、とても丁寧に物腰柔らかく語る語るヘッドコーチ。どんなチームを作り上げるのか楽しみにしたいと思う。

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文:木村英里
写真:オガワブンゴ




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