B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也

 今シーズンからB3リーグに参入した長崎ヴェルカは、10月9日10日に長崎県立総合体育館で開催された横浜エクセレンス戦に挑んだ。これが長崎にとってはホーム開幕戦、初めて長崎のファンの前でのプレーとなった。試合はGAME1を109対66、GAME2も100対71と連日大差をつけ圧勝した。

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也
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 チームの状態について#4狩俣昌也は「まだミスもあるし細かく足りないところもあるが1ゲーム1ゲーム良くなっている」という。プレータイムのシェアや交代の使い方などによって、先月に行われた天皇杯に比べても40分間チームのパフォーマンスが落ちなくなってきている印象を受けた。そんな若い選手も多く動き出したばかりのチームを、狩俣はキャプテンとして強い責任感を持ち引っ張っている一人だ。伊藤拓摩ゼネラルマネージャー兼ヘッドコーチ(以下GM兼HC)は、そんな狩俣をはじめベテランの選手たちについて「期待以上に面倒見が良い」と信頼を寄せている。

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也
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 #22近藤崚太は、自身がまもなく若手ではなく中堅と呼ばれる世代になることを理由に挙げ「自分に対しては見守られている感じがしている。直すべきところを一言二言指摘してくれる。それは見てくれてはいるけれど自覚しろよというメッセージ」だと感じている。そんなベテラン選手たちの期待に応えるべく「若手だけど自覚と責任を持って、声を出して引っ張っていくという気持ちで」と力を込めた。
 

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也
B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也

 そして近藤には三遠ネオフェニックスの特別指定選手として加入後、ベルテックス静岡でプレーをした経験から、B1のトップレベルで戦ってきた選手たちを見て感じたことがあった。それは「明らかにコミュニケーション量が違う」ということだ。練習後に「毎回声がかすれるくらいに皆声を出し喋っている。そこはB1でやってきた選手とB3にいた僕との違いで勉強になっている」と、試合中のみならず、日頃の練習や取り組み方、そして積極的なコミュニケーションに至るまで学ぶことは多い。

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也
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 また試合中、長崎ベンチを見ていると伊藤GM兼HCと前田健滋朗アソシエイト・ヘッドコーチ(以下AHC)が入れ替わり立ち替わりコートサイドに出てきては選手たちに指示を送っていることに気が付く。よく見ていると、オフェンスの指揮を伊藤GM兼HCがディフェンスの指揮を前田AHCが執っている。これについて伊藤GM兼HCは「ディフェンスは9割以上ほぼ彼に任せている」とし、「彼はコーチとして実力もあるし、ディフェンス面ではこだわりや良い戦術を知っていることもあり、浸透をしっかりできているので彼に任せようと思った」と評価していた。
 前田AHCは、A東京で伊藤GM兼HCと同時期に選手として在籍、その後オーストラリアのメルボルン・ユナイテッド、昨シーズンまでは秋田ノーザンハピネッツでACを経験してきた優秀なコーチだ。今回、再び長崎でタッグを組み、B3優勝を目指す。

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也

 開幕節2試合を終え、伊藤GM兼HCは試合後に客席に向けて「今日初めて見に来てくれた人?昨日も来てくれた人?」と質問を投げかけた。拍手の量からは初めてプロバスケットボールを見たという人が多いことが伝わった。楽しかった!というファンの想いは拍手によって充分に感じ取ることができた。

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也

会見では「選手も意識していたが、プロは勝つことが大切だが、それ以上に来てくれた人たちにワクワクを与え楽しいと思ってもらうことが必要。子供たちが目指したいと思うことが大切。楽しんでもらえたことが一番」と笑顔を見せていた。最初は「戦術とかでなく、純粋にダンクやシュートやディフェンスがすごいねとかチームワークがすごくいいねというところで感動してもらえる」はず。そういった意味で、この横浜エクセレンス戦においては勝利も収め申し分ない出来だったのではないだろうか。

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也

 試合後、日本を代表する強豪アルバルク東京で指揮した経験を持つ伊藤GM兼HCと、昨シーズンまでB1リーグに所属する滋賀レイクスターズに在籍していた狩俣にB3リーグの印象を聞いた。
「日本人選手はアグレッシブな選手がすごく多いとまず感じた。外国籍選手に頼らず自分でという姿勢を昨シーズン観戦していた頃よりも感じる」と伊藤GM兼HC。これについて狩俣は「僕もエリートコースを歩んできたわけではないが、B3の選手たちは上を目指してハングリーにやっていると思う」と分析した。
 また狩俣は「能力は高い選手もいる。ただフィジカルや状況判断の部分でB1B2に比べると差がある」といい、先月行われた天皇杯でもB3のチームと対戦し「自滅してしまうチームが多い」と感じた。

B.LEAGUE2021-22, B3リーグ 2021-22, 長崎ヴェルカ

 長崎は在籍する14選手のうち6選手が昨シーズンB1でプレーをしていた(一定期間川崎ブレイブサンダースでプレーをしていたマット・ボンズも含む)。B3リーグで戦う多くの選手にとって、目の前に突如黒船襲来の如くBリーグのトップ選手たちが現れた。対戦相手にしてみたら、戦意喪失してしまうほど悔しい思いをすることがあるかもしれない。

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也
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B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也
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ただ狩俣は「自分が一生懸命プレーをすれば、 B1で経験してきたことを自チームだけでなく対戦チームの選手にも何か感じてもらえると思う」と語る。悩みに悩み抜いた末に決断した長崎への移籍。練習も試合も「今はただ楽しんでやっている」という今、前述の伊藤GM兼HC同様バスケットボールの楽しさや魅力を伝える必要性をとても強く感じている。その後には選手の顔や名前を覚えてもらう、そんな一つ一つの積み重ねが長崎ヴェルカの歴史を作っていくことになる。「試合を見てバスケット選手になるという夢を持った」という自身の子どもの頃と同じように、夢を持つ子どもが増えてほしいと願っている。まだ少ない長崎出身のBリーガー。日本代表として東京五輪でも活躍した田中大貴(A東京)のような日本を代表する県内出身の選手がたくさん誕生する可能性を秘めている。

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也
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 話を聞きながら、狩俣がこの長崎での挑戦にあたり背負ったものの多さに驚いた。チームだけでなくB3リーグの底上げ、選手たちのレベルアップも視野に入れている。対戦する選手たちからすれば、B1レベルを体感できやり合うことができるまたと無い機会だ。B3リーグ全体の成長に繋がることを期待したい。長崎はB3優勝、そして最速でB1昇格を目指し走り出した。そんなチームをけん引しながら、地域創生のために新たなバスケットボールという文化を長崎の地に根付かせるために、これまで積み上げてきたプライドと強い責任感を胸に狩俣はコートに立っていた。

B1リーグで経験してきたことを感じ取ってもらいたい 長崎ヴェルカ 狩俣昌也
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文:木村英里
写真:オガワブンゴ

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