バスケットボール人生でここまで悔しいことはなかった 福島ファイヤーボンズ 橋本尚明
B2リーグのプレーオフに初めて進出した福島ファイヤーボンズ。5月7日8日9日と敵地ゼビオアリーナ仙台で、クォーターファイナル仙台89ERS戦に臨んだ。結果、1勝2敗と残念ながらセミファイナル進出は果たせず、悲願のB1リーグ昇格は叶わなかった。
GAME1、仙台ペースで進むも#16橋本尚明などの活躍などにより接戦に。しかし残念ながら74-80のスコアで敗戦。後が無くなった福島はGAME2、またも立ち上がり仙台にペースを握られるが追い上げを見せる。GAME1同様に接戦の展開を72-65で勝ち切った。
勝てばセミファイナル進出が決まるGAME3。クォーターファイナル4カードのうちGAME3までもつれたのは唯一仙台対福島のみだった。序盤はともに固いディフェンスが光ったが、高さで勝る仙台相手にリバウンドで苦戦。第4クォーター、ミスから入ってしまった福島に対し仙台は勢いに乗り、57-72と最終的に15点差をつけられ敗戦となった。
戦いを終え、森山知広ゼネラルマネージャー兼ヘッドコーチは「まずはこの舞台に連れてきてくれた選手とスタッフ、ファイヤーボンズに関わる全てのみなさんに感謝したい。勝てなかったのは僕の責任。シーズンを通して選手たちはよくやってくれた」と感謝と労いの言葉を述べた。福島では6シーズン目となった今シーズン、自ら選手やスタッフを編成しB1昇格を目指して突き進んできた。「この経験をしたことが大きな意味のあるシーズンになったと思う。必ずB1に昇格するという目標に現実的に届くところまで来ている。昇格のために何が足りないのか突き詰めてクラブとして前に進み続けたい」と冷静に語った。
橋本は試合を終えて「やり切った。気持ちと気持ちのぶつかり合いだったが、最後は仙台の方が上回った」と振り返った。「期限付移籍という形でチームに来た。福島が好きでチームメイトやスタッフ、会社に感謝しかない。初めてB2でプレーしたが、バスケットボールも人間としても成長できた」とクラブへの思いを明かしていた。
「バスケットボール人生でここまで悔しいことはなかった」という橋本は、怪我からの復帰もあり「今シーズンに賭けていた」のだ。「気持ちを前面に出すタイプで、人に迷惑をかけてきた人生だった」が、怪我を通し「1人では何もできない」と学んだ。「みんなの支えがなければ何もできないシーズンだった。恩返しのシーズン」と位置付け挑んできた。試合後には迷惑をかけた家族を思い、コート上で涙を流す橋本の姿があった。
B1でプレーをしていた橋本だからこそ感じていた手応えもあっただろう。だからこそ、このメンバーで昇格を成し遂げたい思いも人一倍強かったはずだ。応援してくれたファンやスポンサーを思い「申し訳ない気持ち。この気持ちで福島に帰りたくない」と悔しさが溢れていた。
また「彼がいなかったらこの結果はなかった」と#5友利健哉の名を挙げた。いつも声を出し仲間を鼓舞し続けていた。ベテランたちの姿を見て若い選手たちも感じるものがあったはず。そんな選手たちがB1昇格を目指しクラブを牽引していく存在になって欲しいと思う。
実は会見終了後、「悔しい」と吐き出す指揮官の声がどこからか聞こえた。悔しさを抑えメディア対応を行い、思わず溢れ出たのだろう。今は、果たせなかった目標に対する悔しさが大きいかも知れない。しかし今シーズン、チーム一丸で戦いプレーオフ出場を成し遂げ得た自信も大きいはず。アウェーでのゲーム、そしてGAME3は平日の夜開催であったにも関わらず、会場へ詰めかけたファンの姿は選手たちの目に焼き付いているのではないか。ファンの思いも背負い、今回の悔しさを糧に、来シーズン再びB1昇格を目指す福島の戦いぶりに期待をしたい。