
不屈の闘志で進化を続けるーーアイシン 渡嘉敷来夢の今とこれから
これまで数々の栄光を手にしてきたアイシン ウィングス#1渡嘉敷来夢は、その陰でオリンピック出場を2度も逃す悔しさを味わっていた。だが、決してヘッドダウンすることなく2028年のロサンゼルスオリンピック出場に向けて決意を固めている。しかも14年間過ごしたENEOSサンフラワーズでの安定した選手生活を手放し、2024-25シーズンにアイシン ウィングスに移籍。今シーズンで2シーズン目となる。そこで、ロスを目指す今の気持ちを改めて聞くために、年明けの皇后杯開催中(1月6日)に直撃をした。

インタビューの始まりは、「年が明けてどのようなことを思いましたか?」という問いから始めた。すると、「怪我をしないことが一番だと思いながら過ごしていました。ただ一発目にこういう大会(皇后杯ファイナルラウンド)があるので、自分たちのベストを尽くしたいと思っています。トータル的に見たら、Wリーグ(プレミアリーグの終盤戦)もありますし、日本代表もあり、*そこは入替戦(もし出場することになった場合)との兼ね合いでどうなるかは何とも言えないですけど…」と、アイシンのWリーグでの順位を心配しつつも日本代表の活動も大いに気にしている様子だった。

渡嘉敷といえば、女子バスケットボール界のレジェンドであり、髙田真希(デンソー アイリス)、町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)らとともに、多くの選手たちから一目置かれている存在である。中でも渡嘉敷は名門・桜花学園高校2年生の時に190㎝を超えるサイズを買われて日本代表入り。高校卒業後の2010年にJXサンフラワーズ(現・ENEOS)に入団すると、WリーグのレギュラーシーズンMVPと新人王をダブル受賞するという快挙を成し遂げている。そのシーズンを皮切りに、WリーグのMVPをはじめ、ベスト5、得点王、リバウンド王、ブロックショット王など多くの個人賞を獲得するだけでなく、ENEOSの連覇記録を12へと伸ばす原動力として名実ともに大黒柱へと成長した。さらにWNBAの舞台では3シーズン名を連ねて、世界レベルの経験を積んできた。また2015シーズンにはオールルーキーチーム(WNBA新人ベスト5)に選ばれた。

日本代表でも2016年のリオデジャネイロオリンピックで高さと機動力でその名をとどろかせた。ところが、ベテランの域に入った2020年12月、右膝前十字じん帯断裂の大怪我に見舞われ、地道に苦しいリハビリを乗り越えたものの、2021年に行われ、銀メダルを獲得した東京オリンピックだけでなく、2024年8月のパリオリンピックも金メダルを目指す『走り勝つシューター軍団』を構築している途中、渡嘉敷は2度目の落選という苦汁をなめた。
その年の3月、Wリーグも終盤戦を迎えていた試合後、ENEOSのチーム状況などを聞いていた最中に筆者からの日本代表という言葉に対し、渡嘉敷からは「求められればいつでも行く準備はできていますね。ただ何が何でも入りたいというよりは、自分は一度落とされている身なので次のロサンゼルスに向けて気持ちを切り替えていると言いますか、一応現役である限りはオリンピック出場を目指していきたいとずっと思っています」という決意を聞くこととなった。

パリオリンピックではテレビ放送のゲストという立場でスタジオに呼ばれていた渡嘉敷。その当時の日本の印象を尋ねると、「高さの部分では絶対にチームにとってプラスになったと思いました」と、自身が日本のコートに立てなかった思いを吐露した。さらに「自分にはエネルギーが割とあるので、みんなを鼓舞することはできるだろうなというのも思いましたね」と、言葉を続けた。
結局、スピードとスリーポイントシュートを武器に挑んだパリオリンピックは、グループフェーズを3連敗で終えている。一方、渡嘉敷は引退してもおかしくない年齢でありながら、さらなる成長の機会を求めてアイシンへと移籍し、1年目を過ごしていた。準優勝には終わったもののアイシンを皇后杯の決勝へとけん引し、“チームを勝たせられる唯一無二のオールラウンダー”であることを証明してみせた。
そして、パリで露呈した日本の課題であるリバウンドを埋められる高さと、数々の国際大会出場で誰よりも重ねてきた経験を求められ、2025年5月、当時33歳の渡嘉敷は日本代表のコートに帰ってきたのである。

高校の先輩であり、ライバルでもある髙田真希は次のようなコメントをした。「(渡嘉敷は)特別な選手ですし、大事な時や得点が欲しい時は必ず起点になってくれて、年齢を重ねても点を取れる選手です。そして、一番の良さは声をかけてみんなを鼓舞しているところ。その姿は特別です。そういったスタイルは自分も見習うべきところがたくさんあります」
アイシンのBTテーブスヘッドコーチも「渡嘉敷は何よりもパスがうまい。相手にトラップされても焦らずにいいアシストパスを出せる」と評価する。アイシンでも大黒柱であることは言うまでもないが、渡嘉敷は決して現状に満足せず、いつでもどこへ行っても成長を止めず、スリーポイントシュートを身に付けるなど常に進化するオンリーワンの存在なのである。

最後に、改めて本人の言葉で聞きたかったロスオリンピック出場を目指す真意について聞いてみた。すると、「オリンピックには絶対に出ろよ」と高校の恩師であり、尊敬している井上眞一コーチ(2024年12月31日に逝去)からの言葉が後押しとなっていることを明かしてくれた。
*アイシンは1月25日に行われたWリーグの試合結果をもって、プレミアリーグ7位が確定。3月20日〜22日に実施される入替戦(2戦先勝方式)への出場が決まっている。

文:飯塚友子

