ヴェルカのスタイルをシーズン通して続けるためには全員のステップアップが必要不可欠 長崎ヴェルカ 高比良寛治
16勝23敗、西地区6位でバイウィークを迎えた長崎ヴェルカ(以下・長崎)。クラブ創設期から支える#14高比良寛治に、チームの現在地について話を聞いた。
「シーズンの入りは良かったと思う。開幕戦、天皇杯もチームに勢いがあったと思う。ただもしかしたらどこかで気の緩みもあったのかも。それは選手スタッフ全員含めてどこかで起きていたのではないか」
そう高比良はシーズンのこれまでの戦いを振り返り始めた。
今シーズン昇格したチームと思えないほど、シーズン序盤は勢いを見せていた。しかし2024年に行われたリーグ戦13試合は3勝10敗と負け込んでしまっている。
「大事なのは自分たちがどういうスタイルで戦ってるのか。B1のレベルがすごく高いことはわかっていた。ただその中でどのチームもしていないアップテンポなバスケットボールで、見ている人をワクワクさせること。今までと違ったバスケでBリーグを盛り上げることがヴェルカの理念にあった。その部分が少しずつ欠けてきた。ハードさやアグレッシブさがあっての戦術だと思うが、戦術が先行していて自分たちのやるべきことを見失っている状況が続いた」
長崎と言えば、40分走り続けるアップテンポなスタイル。
「どの試合でもやるべきなのではないか」
そう高比良は投げかける。
2月10日11日に行われた宇都宮ブレックス戦、長崎は連敗という結果に終わった。Bリーグチャンピオンの経験もある東地区の強豪クラブとの対戦後、「相手にはベテランも多い。1クォーターから受け身になってずっと追いかけるストレスが溜まる状況だった」と反省点を挙げた。
高比良は2023年12月13日に行われた天皇杯のアルバルク東京戦を例に出した。「あの試合のように自分たちから先手を取って向こうに受け身になってもらう試合展開にしないと。40分間流れが悪い中でも自分たちのスタイルを貫くことを最低限しないとそもそも勝つチャンスは来ない」
高比良の言葉は厳しかった。
シーズン序盤は「B2昇格チームということで甘く見られていたこともあるのでは」、そんな言葉まで出る。悔しさはひしひしと伝わってきた。
しかしB1での戦いが簡単ではないことも重々理解している。
「スカウティングされた。その中で自分たちのバスケをどう表現していくのか」
今、長崎が向き合う大きな課題だ。
もちろん、オフェンスだけに注力するわけにはいかない。「相手には得点力の高い選手たちがいる。しっかり守らないといけない」。B1で勝利を重ねるためにやるべきことは多い。
「ベンチに座ってる選手も含めてもっとコーチの信頼を勝ち取りプレーをしなければ、ヴェルカのスタイルをシーズン通して続けることが難しい。全員のステップアップが必要不可欠」である。
B3、B2からB1へ最速で駆け上がってきた。「常にハングリーで勝利に飢えている状態。どんな相手にもチャレンジャー精神が必要で、その気持ちを忘れたことはなかった。常に準備をし、40分間誰も手を抜くことなくハードにプレーをしていた。何か言い訳を探してしまうシーンがある」という今。
負けが多くなり、「チームが同じ方向を常に向くために。個人として、チームとしてやるべきことをしっかりとやる、その延長に勝利があるはず。負けた理由がある。もっとその理由を考えていかなければ」。バイウィークはこれまでの戦いから、ヴェルカの現状と課題、今取り組むべきことを見つめる時間となりそうだ。ヴェルカらしさを取り戻すため模索の日々が続く。
今シーズン加入した#18馬場雄大は既にチームの中心。苦しいチーム事情の中でも、「チームに入り最初に感じたことは、B3、B2でプレーする選手ではない、スマートだと思った。だから特別、自分から発することはないが、(必要な時には)彼らを尊重しポジティブな意見を与えるようにしている。僕の一方通行にならないようにコミュニケーションを取り、やりやすい環境を作ることが僕の仕事かなと思う」と、チームを上向かせるために仲間と向き合い続けている。
「充実したクラブハウスや練習環境など恵まれている。バスも提供されている。素晴らしいスタッフもいる」、高比良の言葉からは恵まれているからこそ負けてはならない、そんな責任感も感じ取れた。
高比良は最後に、「負けたい選手はいない。ホームだけでなくアウェーではなおさら、ヴェルカコールは僕らの力になっている。僕らが積み重ねてきたものが今のホームの雰囲気や文化になってきている。ファンのみなさんの声援があってこそ。当たり前のことじゃない。ファンのみなさんが夢中になった理由は過去にある。より一体感のあるチームへ。夢中になれる選手、チームでいないといけない」と、ファンへの思いも胸に残りのシーズンも挑戦を続けていく決意を語った。