B2で一番ディフェンスのいいチームを作ることができた ファイティングイーグルス名古屋
ファイティングイーグルス名古屋(以下FE名古屋)の優勝で幕を閉じた2021-22シーズンのB2リーグ。シーズン開幕前から大型補強をしB1昇格、B2優勝という2つの大きな目標を立て戦ってきた。
昨シーズンのタイトルホルダーや、優勝メンバー、B1経験者、帰化選手とタレントが揃い、優勝候補筆頭として注目され、レギュラーシーズン通して前評判通りの圧倒的な強さを見せた。第3戦までもつれた『B2 PLAYOFFS FINALS 2021-22』もB2の頂点に君臨する王者の風格なのか、今シーズン積み上げてきたものをしっかり表現していた。
「優勝したぞー!」と会見冒頭でも喜びを爆発させていたのは川辺泰三ヘッドコーチ(以下川辺HC)。2017年にアシスタントコーチ就任、2019年からヘッドコーチとして指揮を執ってきた。今シーズンようやく手にしたB1リーグのライセンス。そして掴んだ昇格の権利。さらにB2初優勝と5年越しの悲願達成だった。「B2で一番ディフェンスのいいチームを作ることができたことをすごく評価したい。チーム作りが難しいと思ったが、それぞれを尊重しながらバスケットボールができたことも評価したい。ただファイナルでも反省点があり伸び代があるから合格点」と総括した。
個々の能力が高い選手たちが集まった中で、チームバランスを考えチームのために尽くす雰囲気の良さはファイナルでも現れていた。ベンチでホワイトボードを持ち席を移動する#22ジェレミー・ジョーンズの姿。熱心にボードに書き込み、#21笹山貴哉らの目を見ながら丁寧に説明している姿がとても印象的だった。これについて川辺HCに問うと「そのシーンを僕は気が付いていなかった」と笑いながらも「今シーズン加入した選手が多い中で、コミュニケーションというキーワードはとても大事にしてきた。日頃から練習を止めて自分たちで会話をする時間を設けるなど心掛けてきた。ハドルを組むことなど試合中も大事にしてきた延長線上で自分たちでアジャストしてくれた」と語った。そうした日々の積み重ねはファイナルでも安定感へと繋がっていたはずだ。
ちなみに、ジョーンズについて川辺HCは、「食事をとてもコントロールしているため、アウェーには自分で食事を持って来る」という驚きのエピソードを明かしてくれた。お米はホテルに用意してもらい、おかずやこだわりの味付けのお肉などを大きなクーラーボックスに入れて遠征する。さらに細かなルーティーンもある。朝早くに起床し散歩へ出掛ける。時には対戦相手の選手から「朝早く駅の辺りを歩いていた」と指摘されることもあった。これだけハードな試合をこなしていくと「筋トレをしていても選手たちの体重は減っていくが、ジョーンズや#3エヴァンス・ルークは体重が変わらないか微増している」のだ。それほど真面目にコントロールをし、バスケットボールと真摯に向き合っている証拠だ。
#12野﨑零也は昨シーズン、群馬クレインサンダーズに在籍しB2優勝を経験している。「上のレベルで活躍してきた選手もいる中で、僕はエネルギッシュにプレーをして少しでもチームにプラスになる」ことを意識して挑んでいた。着実にステップアップを続けてきた野崎は物腰は柔らかいが「ディフェンスで(川辺ヘッドコーチから)信頼を受けている」と手応えを感じていた。来シーズン、新たな舞台で更なる飛躍を見せて欲しい。
「優勝という目標を達成できて嬉しい。お互いにディフェンスのチーム、仙台が相手だったからこそ激しい試合ができた」と#11石川海斗はファイナルを振り返った。ただそこにはいつも通り淡々と言葉を選び語る姿があった。「B1で勝っているチームは皆オフェンスのチームではない。NBAなど世界を見てもディフェンスが強いチームが勝っている」とB1で戦うことを意識する。「次の目標に進むために一回体をリセットする必要はあるが、またすぐに動き出さなければ」と休むことを知らない。B1に昇格した後の目標が既にあるからだ。周囲から「どうしてB1でプレーしないのか」という声が無かったわけではない。「期待してもらっている分、期待を裏切らないように、B2だったからかと言われないようにしなければいけない」と危機感を常日頃抱いている。優勝決定から時を経たずして、既に新たな戦いに目を向けるあたりはさすがの一言に尽きる。まずは体を労わり、来シーズンB1で石川らしいハードなプレーを披露して欲しい。
B1昇格とB2優勝を成し遂げたチームへ、ファンの「悲願達成」という感動や喜びが会場を包んでいた。ハリセンの音が時間を追うごとに大きくなっていくのが体感でき、選手たちを後押ししていた。
しかし新たなステージB1のレベルは今回のファイナル以上だ。B2を圧倒的な強さで突き進み頂点へと辿り着いたチームも、そう簡単にはいかないはず。ディフェンスからのチーム作りを変えるつもりはない。
しかしB2 PLAYOFFS中にも笹山は「このチームはまだB1レベルにはない」と語っていた。プレー面のみならず、運営なども課題は山積みだろう。スポーツ王国愛知県において、B1リーグに所属するチームは4つ目となる。ファンをその中でさらにどのように開拓していくのか、注目度の向上などより一層取り組むべきことがある。また、来シーズンはこれまで以上に全国からもバスケットボールファンが訪れるだろう。今後FE名古屋がチームとしてどのような魅力を見せてくれるのかも期待したい。