[FOCUS 福島ファイヤーボンズ]BONDS UP DAY ふくしまが好き

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 あれから12年の月日が流れたーーー

 2011年3月11日に発生した東日本大震災。被災したこどもたちが外で遊ぶことができなくなり、運動不足に陥るなどした。解消することを目的に誕生したバスケットボールスクール。これが福島ファイヤーボンズ(以下・福島)のはじまりである。

BONDS UP DAY

 クラブ発足からまもなく10年を迎える現在は、B2リーグでB1リーグ昇格を目指し戦っている。今も変わらず、福島のみなさんを笑顔に、元気付けるために挑戦を続けている。2023年3月11日、土曜日。福島ではホームゲームが行われた。郡山市にある宝来屋郡山総合体育館で行われた「BONDS UP DAY」は、14:46、震災発生時刻、黙祷からはじまった。

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その後、コート上では、こどもたちとBリーグの島田慎二チェアマン、#4猪狩渉、#11山内翼、#13本多青の3選手が参加し、そなえてバスケ supportedby 日本郵便の一環としてディフェンスアクションが行われた。災害時の初期行動や備蓄品といった防災の知識をバスケットボールの動きと掛け合わせたもので、バスケットボールを楽しみながら防災を学ぶB.LEAGUEオリジナルのプログラムである。

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ゲーム感覚で、地震や津波、火災が発生した際に身を守る行動を楽しみながら学んでいた。イベント後、島田チェアマンは参加したこどもたちについて、「アグレッシブに楽しみながら学んでくれた」と笑顔で語った。

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続いて行われたバスケットクリニックでも、こどもたちが3選手と試合で対戦するなど一緒に楽しい時間を過ごした。また、来場者には大きな「BONDS UP DAY」の赤いハリセンが配られた。ふくしまが好きと書かれたハリセンを手に、ファンは両日声援を送っていた。

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第25節 対山形ワイヴァンズ

 第25節、山形ワイヴァンズ(以下・山形)戦に先立ち、島田チェアマンは、「ボンズはこどもたちの運動不足に悩む社会課題に取り組むために生まれたチーム。また山形は最も多くの福島の被災者を受け入れた県だった。ご縁を感じる対戦カード」と語り、「急成長を遂げている福島には今後もBリーグを盛り上げてほしい」と熱いメッセージを送っていた。

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 11日に行われたGAME1、1クォーターは16-13とリードした福島だったが、2クォーターは福島のシュートがなかなか決まらず。後半、3クォーターも苦しい戦いが続く福島。最大20点差をつけられるも、#16橋本尚明や#55ジョシュ・ハレルソンのスリーポイントシュートなどで食らいつく。

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しかし、この試合を通じて山形は55本と終始リバウンドで圧倒、また#3ジェームズ・ベルが34得点、#21田原隆徳も17得点をあげるなどの活躍を見せ、福島の追撃を許さなかった。結果、74-87で福島は敗れ、詰めかけたファンに勝利を届けることができなかった。
 そして試合後には、選手が参加し、東日本大震災及び2月6日に発生したトルコ・シリア地震災害支援のための募金活動を行った。

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 翌12日に行われたGAME2。1クォーター序盤からリードを許す展開となった福島。28-39と11点差でハーフタイムへ。3クォーター、#88グレゴリー・エチェニケの得点などで追いつき、46-46の同点で4クォーターへ。点を取り合う展開が続き、終盤、福島が得点を重ね勝利を手繰り寄せた。エチェニケが31得点、さらに#6長谷川智伸が17得点と牽引。最終スコアは70-62、詰めかけたブースターへGAME2でようやく勝利を届けることができた。

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チーム発足時から在籍 キャプテン村上慎也

 3月11日、会場に集まったのは3,071人。チームが目標としていた3,000人をついに越えた。これまでのチーム最多入場者数2,665人を大きく上回り、立ち見で観戦するファンもいたほどだった。

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応援に訪れたファンに聞くと、「(福島は)パワーをもらえる存在、ボンズには感謝している」と語っていた。ファンにとって特別な存在であり、クラブ、選手の思いは確実に福島のみなさんに届いている。だからこそ、ファンに勝利を届けなければならないと悔やむ姿があった。そして翌日、GAME2では2,945人が声援を送る中での勝利に安堵の表情を見せたのは、チーム発足時の2013年から在籍しているキャプテンの#8村上慎也だった。

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 連戦を終えて、「昨年はコロナ禍に加えて地震の影響で開催ができなかった。無事に開催ができてよかった。2日間で6,000人を超える方に来ていただき試合ができたことは、福島がバスケで盛り上がっていると示せたと思う」と振り返った。3,000人という数字をなかなか越えられず、クラブとしても苦しんできた。だからこそ、「フロントスタッフにも感謝しているし、ブースターの方々も声掛けをしてくれて感謝の気持ちでいっぱい。幸せだ」と噛み締めた。

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バスケットボールができることは決して当たり前ではない。「プレーできる喜びを感じながら、少しでも楽しいとかバスケットボールをやってみたいと感じてもらえるように」と願い、両日コートに立ち続けていた。

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 村上にとって福島というクラブの存在は、想像以上に大きい。「このクラブが無かったら、プロ生活を1年で終えていたかも」知れず、ボンズが誕生したからこそ「今の自分がある」という。福島出身ではない自身のことを、ブースターは「もう福島県民だよ」と声をかけ地元の選手として接してくれることに嬉しさを感じている。「B1昇格を果たすことでしか恩返しはない」と強く言い切った。

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 クラブ創設当初から応援してくれているこどもたちから、「気がつけば就職するという報告が来るように」なった。またスクール生も、高校生、大学生と成長し近い将来同じコートに立つ日が来るのではないだろうか。こどもたちの成長とともに、自身の在籍年数を実感している。「福島でプレーしたいと思ってもらうこともクラブの存在意義のひとつ」だと信じ、一緒にプレーできる日を待ち望んでいる。
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選手へあたたかな眼差しを送るフロントスタッフ

 クラブ創設当時から働くコミュニティ営業部 部長の蒲田俊彦さんは、グッズ販売や、ファンクラブの立ち上げなどに注力するかたわら、スポンサー集めなど多岐にわたる仕事に奔走してきた、まさにクラブを支え続ける存在。現在は、福島のシンボルになるべく、「多くの方に来ていただき楽しんでもらうことに加えて、広い福島県内で、地域のこどもたちにバスケットボール教室や健康プログラムを行っている」そう。行政と掛け合いながら地域の活性化に向けた取り組みにも力を入れている。まもなく10年というクラブ、「辛抱強く地域で色々な活動をしてきた。郡山中心だけれど、その他の地域とも連携が取れるようになってきた。ボンズと一緒にという思いが伝わったかなと思うし、着々と大きくなってきている」と感じている。

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 3,071人という来場者数には、蒲田さんも「はじめて見る光景」と興奮した。ドタバタの立ち上げ期に「ようやくあげた1勝」を思い出した。「ようやくファンの前で勝てた、あの時の気持ち」に似ている。ついに3,000人の観衆の前で勝利をあげることができた。「ここまでに10年かかった」と感慨深げに語っていた。

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 蒲田さんは栃木県の出身。地元には、地域に根付き県民に愛されるクラブとなり、Bリーグを制するほどの強豪クラブとなった宇都宮ブレックスの存在がある。参考にしながら、「福島でも作り上げたい」と強い思いを覗かせた。「学生時代からバスケットボールをしていたが、まさか仕事になるとは思っていなかった。携わることができて幸せ」と感じながら尽力する日々。「(年齢的には)子供のような世代の選手たち。親目線で、彼らをB1のステージに上げたい」と語る蒲田さんからは、クラブや選手へのあたたかな愛情が垣間見えた。

歌手 小柳ゆきさん 圧巻のライブパフォーマンスでボンズファンを魅了

 両日、歌手の小柳ゆきさんが来場し、圧巻のライブパフォーマンスを披露。会場を熱く盛り上げた。パフォーマンス後、特別に話を聞くことができた。

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 3月11日という「特別な日に呼んでもらい歌唱させていただくことはありがたいし、できるだけ祈りを空にも届けるような気持ちで歌わせていただいた」と語る小柳さん。その想いがこもった歌声はブースターの心に響き、会場も熱く盛り上がった。

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 過去には、千葉ジェッツのホームゲームでもパフォーマンスを披露したことがある。今回、試合中には熱心に声援を送る小柳さんの姿があった。バスケットボールについて、「身近に選手の表情や気迫を見て感じることができるし、ブースターの一体感にも圧倒されるし大興奮」と語ってくれた。

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 「ブースターのみなさんがあたたかく迎え入れてくれて、スタッフの方も親切で、食事に出掛けた際も親切にしていただき、福島のみなさんの人柄が素晴らしいと感じる滞在で、いい時間だった」と笑顔を見せた。

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 「BONDS UP DAY」、小柳さんのパワフルな歌声は会場をひとつにし、ブースターにとって最高の思い出を残してくれたことは言うまでもない。またバスケットボールの会場でぜひパフォーマンスを披露してもらいたいと思う。

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福島とボンズのこれから

 村上は、「在籍1年目に訪れた南相馬市の景色が印象に強く残っている」と話していた。「あちこちに汚染土が残り、立ち入り禁止の区域ばかり。制限された中でこどもたちは生活していた。徐々に入れるようにはなってきているが、街には戻れない方もまだいる。その地域も活気づけられるように盛り上げたい」と、思いを明かしていた。

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そのためにも達成したい、B1昇格。宝来屋郡山総合体育館の改修工事も計画されている中、「今シーズンがすごく大事」と前を向く。残り13試合、「タレント力はある。チームが同じ目標に向かい、同じ気持ちを持つことができれば、結果はついてくるはず」だ。

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ただ、「波がある」という課題。プレーオフ進出へ向けて、やるべきことを再確認する必要がある。「福島のためにという気持ちを忘れずに。この2日間もその気持ちでプレーした。その気持ちを忘れずに戦っていきたい」と力強く語った。

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 また蒲田さんは、「これまでは震災の辛い思い出を語ったり、震災からの復興と言われていた。今後は、震災を知らないこどもたちが増える中、伝えることや風化させないことも大事」だと語る。

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そして、復興を目指し頑張る福島の方々の姿を見てきた。次第に、「他県の方に福島のイメージを聞くと、震災や原発事故といった答えが返ってくる。そのイメージを変えたい」と思うようになった。

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「農産物なども元気を取り戻してきている。我々も福島の今や、元気さを発信していくために、福島のシンボルにならなければ」と、最後に語る蒲田さんからは福島への思いがひしひしと伝わってきた。

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 BONDS UP DAYを通し、改めて福島ファイヤーボンズというクラブの存在意義や価値、秘める力などを感じた。これからも福島の方々とともに絆を高めながら、福島がこれからも前へ進み続ける原動力のひとつになってもらえたらと、そう強く思う。

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文:木村英里
写真:オガワブンゴ

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