福島ファイヤーボンズ「REPAINT」のシーズン キーマンが語る

[FOCUS 福島ファイヤーボンズ]「REPAINT」のシーズン キーマンが語る

 福島ファイヤーボンズが今シーズンいろいろと変わるらしい、そんな話が届いた。何がどう変わり、何を目指すのか。balltrip MAGAZINEではマーケティング部長として舵を取るキーマンに話を聞いた。来シーズン、ホームアリーナである宝来屋 郡山総合体育館は1年間改修工事に入る。さらに今シーズンから新Bリーグ(2026年から始まる新リーグ構想)のレギュレーション審査が始まる。福島にとっては「ここで結果残さないと、という勝負の年」なのだ。「盛り上がり、集客は僕の責任」と語るのは仲亀敦氏。開幕戦の前も「いかに盛り上げるか」と頭を悩ませ続ける姿が印象的だった。

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福島ファイヤーボンズの課題とポテンシャル

 福島ファイヤーボンズを運営する福島スポーツエンタテインメント株式会社。2021年7月にその人物は入社した。現在、マーケティング部の部長を務める仲亀である。オーナー会社である株式会社識学が福島に経営参画をしたタイミングで、手伝い始めたことがきっかけだった。前職はスタートアップの広告代理店。創業者の一人として立ち上げた会社は上場を果たすまでに成長したものの、「人のふんどしで相撲をとっていた。自分のふんどしで相撲を取ることに憧れていた」という。実は川崎ブレイブサンダースのホーム、とどろきアリーナの近所に住んでいた。頻繁に「川崎フロンターレやブレイブサンダースの試合を観戦していて、スポーツが持つ魅力に惹かれていた中での縁だった。広告マンとして身につけた「チャレンジスピリットが現在も活かされている」というが、どんなチャレンジを行っているのか。

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 マーケティング部長として、チケット・広報・グッズ・ブースタークラブ・デザイン・興行や企画演出などの分野を統括している。最初の1年は「反省点ばかりだった。広告代理店時代は何千万、何億円規模の予算と向き合ってきたが、使える額が全く異なる。数万円単位もあるし、数十万円だと多いなという規模感になる。お金を使わず頭を使うことに最初は面食らった。思うような結果が出せない助走の期間だった」と振り返る。
 「変わろうとしているクラブ」と感じつつ、「まだのんびりしている」と感じたのも事実。タイムスケジュールの管理で「今やらなければならないことに対して、後回しにしていないか」と首を傾げるシーンが多々あった。「他者目線が足りない」と指摘する。近々では、「集客に向けた新たな取り組みを準備していたが、実施予定日を確認したら開幕後の段取りになっていた」という。新シーズンの開幕に多くの来場を期待するならば、耳目が集まる開幕前に仕掛けるのが当たり前。「忙しさは十分に理解している」が、その中でも改善できることがあるはずと模索の日々だった。

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 仲亀は「課題は2つ」と語る。1つは「人材の確保」についてだ。実は、クラブに入り最初に取り組んだことが「グッズもチケットも参考となる過去の蓄積データがほぼない状況。PDCA(Plan/計画→Do/実行→Check/評価→Action/改善)を繰り返す体制の構築と整理から始める必要があった」と振り返る。結果的にグッズ売上は昨シーズンに比べて180%増。「私は商品化の計画において基本的なポイントを押さえて整理しただけで、グッズ担当者とデザイン担当者の努力があってこその結果。ただし、当たり前のことを当たり前にやることで、再現性が生まれ組織が強くなる」と仲亀は語る。
 SNSにも課題があった。昨シーズンは新卒の社員がたった1人で全てのSNSを担当していた。今シーズンは人員を増やし、各チャネルに沿った戦略を元にアクションしていくことで、厚みを増す予定だ。徐々に人員不足は解消されつつあるが、「福島だから入りたいという熱量や経験者の確保」は難しい。東京では人材の確保にそこまで苦労しなかったが、経験を重視すると福島では引っ越しや移住が伴ってしまう。対象者を県内に絞っても多くの応募が集まらない。地方都市、地方クラブ故の難しさを痛感している。

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 もう1つの課題は「危機感」である。2年ほど前、クラブは財政難によりクラブライセンス剥奪の危機に直面していた。識学や各所からの支援もあり乗り越えたが、その後「識学がついたから安泰と落ち着いている面はないだろうか。上手くいかなければ真っ先に切られる可能性もあるはず。一度乗り越えたからこそ危機感が薄れているのではないか」と危惧していた。

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 もちろん、課題だけでなく大きなポテンシャルも感じている。福島はスポーツ不毛の地と言われている。プロスポーツチームはあれど、トップリーグに身を置くクラブが無いからだ。これはつまり「福島といえばボンズだよねと言ってもらえる可能性がある」ということ。「地域として高齢化や人口減少といった問題もあるが、先に一番を取ったところがビジネス面では勝機を見出せる」と前向き。例えば、広島県には広島東洋カープという圧倒的な人気と存在感を誇るプロスポーツチームが存在している。仲亀が転職する際に、可能性を感じ挑戦を決断するに至った理由の一つでもあった。

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 またクラブは東日本大震災を機に生まれた。(2021年3月4日の記事 東日本大震災復興10年イベント 福島ファイヤーボンズスペシャルマッチ)「今シーズンは2023年3月11日に興行が予定されている」中で、バスケットボールが、ボンズができることは何か。福島を元気に!という思いで日々活動しているが、改めて向き合う時がやって来る。「応援してもらえる伸び代があり、他にはない強さ」だと語る。ファンとより強い絆を結べるのは福島だからこそである。

REPAINT

 「REPAINT」という今シーズンのスローガンは3つの柱で考えている。売り上げ、集客、チーム成績だ。売り上げは新Bリーグのレギュレーションにも指定がある。

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「我々の最高が昨シーズンのおよそ3.8億円という売り上げ。レギュレーションには未到達」だ。それでも昨シーズンは「スポンサーやブースターの増加に加えて企業版ふるさと納税なども取り組んでいる」ことから売り上げは昨対比146%と増加した。しかし新Bリーグ構想と向き合うと今まで以上の角度で成長を目指さなければならない。今シーズンの売り上げ目標は5.5億円である。

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 続いて集客の面で「REPAINT」するべき数字について。昨シーズンの平均入場者数は814人。コロナ禍に加えて、3月16日に福島県沖で発生した福島県沖地震の影響でメインアリーナ、郡山での開催が叶わなかったり、無観客開催で対応など試練も多かった。過去最高入場者数は2,665人。今シーズンまずは3,000人を目指す。「B1のように4,000人を目指したいところではあるが、そもそも現時点では県内で4,000人を収容できるアリーナが現状無い。遠すぎるところに置いても士気が下がるだけ」だ。B2でトップの集客をまずは狙っていく考えだ。前述の震災を受け改めて「まだ復興は道半ば。僕たちが人気のあるクラブになり強くなることで、笑顔になる、地域に戻ってきてもらえるきっかけになりたい。地元にもっと貢献できるところはある」とも実感していた。

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 さらにチーム成績の「REPAINT」、今シーズンからチームスローガンではなくフロント含めたシーズンスローガンに変更しクラブ一丸の挑戦を意識している。「フロントは勝敗を左右することはできないが、雰囲気作りや目標のピントを合わせて」いる。B1に昇格できれば福島県内で初めてのトップカテゴリーのチームになる。福島のスポーツ史においても「REPAINT」できるか、福島の大きな挑戦だ。

ついに迎えたシーズン開幕

 昨シーズン、初めてチームはプレーオフに出場。残念ながらクォーターファイナルで仙台89ERSに敗れたものの「レギュラーシーズンとは異なる雰囲気だった。敗れた後に選手たちが感情を剥き出しにして悔しがっていた」ことが印象深かった。会場のアウェー側に揃った紫色のユニフォーム姿と熱気、さらに郡山市内で行われたパブリックビューイングの盛り上がり。かつて川崎フロンターレの試合の日には老若男女が水色のユニフォーム姿で歩く様を見ていた。同じ景色を福島でも作り上げたい。

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 その第一歩として開幕前から郡山駅前や商業施設で街中ジャックを始めた。駅前には選手のフラッグが掲げられていた。サンロッカーズ渋谷から移籍した#55ジョシュ・ハレルソンと広島ドラゴンフライズから移籍した#88グレゴリー・エチェニケのフラッグには「クラブ史上最強の助っ人コンビ」という文字が載っている。それぞれのキャッチコピーも仲亀が設定した。
 チーム存続の危機を迎えた時も変わらず支えてくれたファンがいる。プレーオフで敗れた際に涙を流すファンがいる。「報いなければ」と感じていた。開幕前から街中ジャックを見たり、SNSに発信すると喜びのコメントがあったことが「すごく嬉しい」と笑顔を見せていた。「駅前を中心に各商店街や商業施設の方々も“街を盛り上げるためなら”と快く協力してくれた。恩返しのためにも、福島の中で存在感を出して地域を盛り上げていきたい」と意気込む。シーズン中、常に掲げられているので訪れた際にはご覧いただきたい。

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 駅前のフラッグを見た#16橋本尚明は「僕だけ柄が悪い。福島の街が平和になる」と感想を語り笑わせてくれた。家族も思わず写真を撮るほど「嬉しかった」という。「ファンの方が一緒に写真を撮るようなルーティーンになったら」と期待していた。運営サイドの奮闘ぶりは選手たちにももちろん伝わっている。「熱量が素晴らしい。しっかり現場のコーチや選手が追いついていかなければいいチームは生まれない」とも語っていた。選手たちから「例年以上に今年は昇格しなければ」という強い思いを感じている。年々成長を遂げ、昇格に手が届くところに来ている。「仙台にプレーオフで負けた時に感じたのは、仙台は気持ちの面でも上回っていた」ということだった。足りなかった部分も明確になり、プレーオフでの経験も選手たちには大きな糧となっているはずだ。

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 10月1日2日、開幕節を宝来屋郡山総合体育館で佐賀バルーナーズと戦った。初戦は84-77と勝利したが、GAME2は74-54と大敗してしまった。この2戦、GAME1は2,482人、GAME2は2,536人が詰めかけていた。残念ながら「3,000人目指していた部分で100点ではない」と仲亀は悔やんだ。
 開幕初戦を終えた直後、西田創代表取締役社長にも話を聞くことができた。「ホッとしている」と笑顔を見せつつ、「悔しさもある。歴史を塗り替えるとREPAINTというスローガンのもと、福島にトップスポーツチームをという意気込みでやっている。集客も最高を塗り替えたかった。2,665人の過去の記録を塗り替えたかったから悔しい。ただコロナ禍で1,000人ほどだった観客が2倍以上集められたことは成果。もっと改善したい」と力強く語った。
 苦しい時は必ず来る。「そこで立ち向かえるチームを作りたい。外側の価値観や直向きさが見ている人に刺さるチームにしたい。今日は体現してくれた」と評価した。この継続が地に根付いたチームへと成長させる。

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 橋本も「福島で初めて見た景色で嬉しかったし感動した。福島がバスケットボールで盛り上がってくれるのかなと期待が持てた。福島県と福島ファイヤーボンズが大好き。これが平均になるようにいい試合をしなければ。覚悟を持って挑みたい」と熱く語っていた。

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 目標は達成できなかったが、得たものもあった。これまでは仲亀が担当するマーケティングの部署でのみ集客を担当してきた。しかし今シーズンは、「集客こそがクラブの全ての根幹」という方針のもと、各部署、各人員に集客目標を共有。動きの速度にはまだばらつきはあるが、社内一丸で集客という一つの目標を達成しようという大きな一歩を踏み出せたことも事実だ。
 郡山市で昨シーズン実施したホームゲームの平均はおよそ1,012人。今シーズン開幕節以降のホームゲームでは平均1,600~1,700人が入場している。「昨シーズン、プレーオフまで進めたことでより期待してもらえるようになった」と感じる。

福島ファイヤーボンズ「REPAINT」のシーズン キーマンが語る
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 開幕節GAME2以降、福島は苦しんだ。6連敗と厳しい船出。「試合が始まれば勝敗はチームに託し、勝利を祈るしかない」とコートを見つめた。ただ、ファンから届く厳しい言葉もチームへの期待、愛情の現れ。「想いに応えられるようにチームもフロントも頑張っていきたい」と笑顔を見せた。

今後の改良点

 初めて観戦された方の感想も複数届いた。「チケットもぎりの場所がわからない」、ハッとさせられた。ロビーへ入るとフードコーナーなどが賑わう。導線のわかりやすさは、おもてなし、リピートしてもらう、様々な面で重要なポイントだ。「毎試合会場にいると、意識していても自分たち目線の当たり前が増えてしまう。僕らが想像する以上にわからないことが多いのだ」と改めて気付かされた。もっと、様々なお客さまの目線に寄り添うことの必要性を実感した。会場内での満足度の上昇は欠かせない。

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 こうした初めて福島ファイヤーボンズと出会った方々を、ファンに、そしてまた観戦に来てもらうために、チームとしては勝てずとも「戦う姿勢を見せる」こと。苦しい6連敗ののち、10月23日、福島トヨタクラウンアリーナでの対ライジングゼファー福岡では100-82と大量得点で勝利。長いトンネルをようやく抜け、ほっとしていた。 
 この先に目を向けると、12月24日25日や1月1日2日などにもホームでの試合開催が予定されている。ハロウィンのイベントは「まだまだ手作り感はあるが、それも含め楽しんでもらえたようだ」と一定の手応えを得ていた。クリスマス、年始のホームゲームをどう盛り上げるか。「元日にどれくらいの人が来てくれるか心配」と本音も漏らしていた。仲亀が頭を悩ませる日々は終わらない。
※ハロウィンイベント https://twitter.com/firebonds/status/1586923882329821188

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 今回の取材の最後、「瞬間風速は吹かせることができる。平均をリーグは問うてくる。ここからが本番だ」と仲亀は気合を入れ直した。思い描いたスタートダッシュとはならなかった。しかし長いシーズンはまだ始まったばかり、まさに継続は力なり。県を代表するスポーツへ、「福島といえばボンズ!」といつか多くの人が応えるその日まで、「凡事徹底」と繰り返す仲亀をはじめ福島ファイヤーボンズの挑戦は続く。

文:木村英里
写真:オガワブンゴ