試合開始前、会場内はなんとも言えない空気に包まれていた。
2024-25シーズンの特別指定選手(プロ契約)として加入した米須玲音、山内ジャヘル琉人がロスター入り。体調不良で急遽、篠山竜青と長谷川技がロスター外となった。長年、川崎の中心として牽引してきた2選手のロスター外に思いを馳せ、涙を浮かべたファンの姿もあった。
12月28日29日、川崎市とどろきアリーナで行われた川崎ブレイブサンダース対茨城ロボッツ。GAME1、そんな空気をレイアップやスリーポイントシュートで得点を重ねた野﨑零也を中心に一掃した。
チームにとっては苦しい10連敗だった。ディフェンスも、オフェンスも課題が多かった。ミスを引きずったり、プレーに迷いがあったり、そんな姿も見られていた。しかし、茨城戦は迷いも減りプレーの判断も明らかに早くなっていた。以前と比べ自信を持ってプレーする川崎の選手たちの姿がコートにはあった。
結果として、川崎はGAME1は82-74、GAME2は89-78と今シーズン初の連勝を飾ることができた。篠山と長谷川抜きで戦った川崎。この試練がチーム一丸となるきっかけになったように思う。
さらに、GAME2では3得点10アシストを決めMVPにも選出された米須の存在も大きかった。GAME2終了後には、「今日は自分の得意なロングパスなど、チームにプラスして、いい流れで試合を進め勝利することができてよかったです。オフェンスもディフェンスももっとできると思っているので、試合を重ねながらもっと成長していきたいです」と意欲を見せていた。得意とするアシストに加えて、課題としている得点面での成長など今後が楽しみな選手が加わった。米須は下位に沈む川崎にとって明るい兆しを予感させるものだった。
ロネン・ギンズブルグヘッドコーチは、米須について、「大学の試合も観に行きましたが、最初の3分間で彼の持っているものの素晴らしさを垣間見ることができました。彼が加入してくれることが楽しみでした。素晴らしい選手を獲得してくれたフロントの頑張りだと思います。山内とともに、2人はチームの中心になっていく選手です」と語り、その期待の高さを伺わせた。
さらに、「彼のアシスト能力やパスセンス、フロアをどれだけ長く見られるかなど、素晴らしいものを持っています。経験を積み重ねてできたものではありますが、彼が持って生まれた才能、センスでもあるでしょう。そのセンスをさらに成長させていくことを楽しみにしています。オフェンス能力やディフェンスの体の当て方などまだ慣れなければいけないところですが、それは彼の伸び代です。この先どんな選手になっていくのか楽しみですね」と、あたたかなエールを送った。
「ここまで早くチームにフィットし活躍してくれるとは思わず、嬉しい誤算でした。体を作りオフェンス力を磨いていけば、すごい選手になっていきます」と、早速指揮官を驚かせ、チームを連勝へ導いた米須。プレーの質だけでなく、その落ち着きぶりにも驚かされた。
2025年、苦しみ抜いたチームとともに米須の新たな挑戦が始まる。今後、各クラブからスカウティングされる中で成長が求められる。2025年、balltrip MAGAZINEはそんな米須の成長を追っていきたい。
