
「勝ち方を勉強しないといけない」 川崎ブレイブサンダース 桶谷大ヘッドコーチの勝てるチームづくりへの挑戦
「今までとは違う角度からコートへ向かった時は新鮮でした」
そう語ったのは、今シーズンから就任した、川崎ブレイブサンダースの桶谷大ヘッドコーチだ。
これまで、この場所には対戦相手の指揮官として立ってきた。けれど、この日初めて、川崎のベンチに桶谷HCは座った。

日本代表HCとしてサウジアラビアでの戦いを終え、帰国してすぐ駆けつけた川崎のプレシーズンゲーム。試合の指揮を執ったのは勝久ジェフリーアソシエイトコーチだったが、桶谷HCはベンチから戦況を見つめ、途中からは立ち上がって選手たちへ指示を送っていた。選手や審判とコミュニケーションを交わす姿もあった。

「試合の50分くらい前に桶さんが来ると知って。『桶さんだ~!』と思いました(笑)」
そう、茶目っ気たっぷりに明かしたのは、川崎の象徴・篠山竜青だ。
ファンにとっても、待ち望んでいた瞬間だった。
「本当に桶谷さんが川崎のHCなんだ!と思いました。勝つチームを作ってくれたら」
そんな声からも、新たな指揮官に寄せられる期待の大きさが伝わってくる。

ここ数シーズン、苦しい時を過ごした川崎。そこからの巻き返しを託された桶谷HCにとって、8月29日は、川崎のホームで踏み出す最初の一歩となった。しかしこの日は、桶谷HCが指揮を執ったわけではない。指揮したのは勝久ACだった。そして仙台89ERSとの一戦は、最後まで勝敗の行方が分からない展開となった。川崎と仙台は終盤まで競り合い、83-83。プレシーズンゲームのためオーバータイムは行われず、引き分けに終わった。

「今日は、今シーズン初めてファミリーの皆さんの前で試合ができるということで、選手たちは楽しみにしていました。みんな勝ちたかったという気持ちが最後に滲み出ていました。もったいないミスがあり、勝ち切れなかったことは課題です。自分も、あそこでタイムアウトを取ればよかったという反省もあります。今日の教訓を生かしたいです」
試合後、勝久ACはそう振り返り、勝ち切れなかったことへの悔しさを隠さなかった。


桶谷HCも同じように受け止めていた。
「勝ち方を勉強していかないといけないと思います。リーグで勝っていくチームは、こうした接戦を勝っています。プレシーズンで課題が出てよかったです。みんなで解決していけば、自ずと強いチームになると思います」
開幕まで、残された時間は1カ月弱。その「勝ち方」を学ぶのは、選手だけではない。
「自分にとって、コーチとして本当に成長しかないと思っています」と語る勝久ACが、桶谷HCから学びたいと挙げたのは、「勝つメンタリティー」や「ゲームのクロージング」だった。
「桶さんは、たくさんの試合を戦って経験されて、5年連続チャンピオンシップに出場し、優勝もした方です。今のチームや自分が抱えている課題について、学ぶことがたくさんあると思うので楽しみです」

川崎はこれまで2シーズン、トランジションの速いバスケットを明確に掲げて戦ってきた。
「自分もそれにアジャストして、また新たな世界が見られて、楽しめた部分はありました。(それに対し今シーズンは)自分たちの強みとか、相手の弱みとか、ミスマッチがどこにあって、みたいなことを考えてプレーすることが求められると思います」

これは、篠山が若い頃から、このチームで叩き込まれてきたことなのだという。そして篠山は、新たなバスケットへの期待を述べた。
「いろんな選手のいいところがたくさん出るバスケットが展開できればいいなと思います。今日見ていても、仙台のラインナップもすごく強烈でしたけれど、やはりゴール下のところの高さやパワーの部分でアドバンテージがあるなと改めて感じました。ゴール下が強いっていいなと思ったのは、久しぶりの感覚でした」


試合後、桶谷HCに、初めてホームとして立ったとどろきアリーナについて感想を聞いた。
「ファンの方たちもすごい声援で迎え入れてくれました。本当に、率直に嬉しかったです。誰かが応援してくれるということに対して、その期待に応えられるようにしたいと素直に思いました」
期待される理由は、もう十分にある。川崎は勝利に飢えている。
新しい川崎が、動き出した。今シーズンの開幕が待ち遠しい限りだ。


