譲るつもりはない 川崎ブレイブサンダース 篠山竜青
川崎ブレイブサンダースは10月8日、神奈川県川崎市にあるとどろきアリーナでホーム開幕戦を迎え、広島ドラゴンフライズと対戦した。
佐藤賢次ヘッドコーチは「難しい試合だった。フィジカルなディフェンスとピックアンドロールディフェンスのところで解決策が見つからなかった。ずるずる行ってしまった前半が響いた」と試合後に悔やんでいた通り、71-72で追い上げを見せるも及ばず、惜しくも敗戦。「後半追い上げを見せた場面もあったが、ガンと行き抜ける力が足りない」と課題点を挙げていた。
逆転とはならずも、追い上げる川崎に会場の温度は確実に上がっていった。その中心にいたのは、#7篠山竜青だった。
1日2日には、静岡県浜松市にある浜松アリーナでは三遠ネオフェニックスとシーズン開幕戦を戦った。両日とも接戦を辛くも勝利してきた。2日に行われたGAME2はオーバータイムにもつれ込んだが、オーバータイムで7得点を決める勝負強さを見せつけ勝利に大きく貢献していた。
佐藤ヘッドコーチはオフシーズンからの篠山の様子について「今シーズンは体作りからチャレンジしている。スキルも課題にチャレンジしたり、ベテランだけどチャレンジしていく気持ちや成長する気迫が見えていた」と明かしてくれた。「それがいい方向に行っている気がする」とチームとしても好材料だ。
広島戦後、balltrip MAGAZINEでは、篠山にプレシーズンからの取り組みについて聞いた。川崎はこれまで7月から始動することが多かった。しかし今シーズンは8月から始動した。「8月まで個人のワークアウト期間だった。自分の課題をじっくりゆっくり見つめ直すことができた」と振り返る。
その例として「トレーニングや体重を増やすことにチャレンジした。昨シーズンを振り返り、体の強く身体能力も高く、若い選手がどんどん出てきているし、リーグ全体の傾向としてスイッチが多くなったと感じている。スイッチして外国籍選手をマークすることも増え、最低限守れるように、耐え凌げるようにしなければと、ウェイトトレーニングに着目した」ことが始まりだった。1ヶ月もの期間、自分自身と向き合い体を仕上げてきていた。指揮官が評価していたチャレンジする姿勢。まだまだ成長しようと貪欲な篠山は、より精悍な顔付きをしていた。
今シーズン、篠山と同じポジション、ポイントガードには、25歳と若くエネルギッシュな#21納見悠仁が加入した。納見は昨シーズンまで新潟アルビレックスBBでプレーしていた。今シーズン、篠山と#0藤井祐眞の座を脅かす存在となるか。三遠戦では、篠山のオーバータイムに試合を決定づける活躍を目の前で見せ付けられた。納見は「昨シーズンは、あのようなシーンでは出ていることが多かった。自分があの場面でコートに立っていたらどうしていたか」とも考えながら先輩の活躍を見つめていた。「(篠山の)安定感や勝負所で決め切る力はすごいと思うし、これまでの経験を感じる。そこを目標に、(篠山と藤井から)盗めるものは盗んでレベルアップに繋げたい」と語り、コートに立ちたいという思いを隠さなかった。
そんな納見の存在、「意識している」と篠山は大きく刺激を受けていた。「久し振りに本当の意味で競争がある。いいプレーをしなければ試合に出られないというヒリヒリした状態」で、練習からしのぎを削り続けている。でもその表情からは充実感と溢れ出る自信が垣間見えた。「譲るつもりはない。奪われるなら仕方ない」と納見からの挑戦を受けて立つ。激しいポジション争いの中で、ベテランも若手もともに成長し高め合える環境は整った。悲願のBリーグ制覇へ、今シーズンも篠山から目が離せない。