仙台らしく泥臭く 仙台89ERS

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 5月20日から3日間、『B2 PLAYOFFS FINALS 2021-22』が愛知県名古屋市にある枇杷島スポーツセンターで行われた。仙台89ERS(以下仙台)はアウェーでファイティングイーグルス名古屋(以下FE名古屋)と戦った。今シーズン、B2リーグでしのぎを削り合い、ともにB1リーグ昇格を決めている両チームの試合はとても熱いものだった。GAME1を落としあとが無くなった仙台はGAME2に勝利し、運命のGAME3までもつれた。今シーズンの集大成としてB2の頂上を目指し戦ったが、惜しくも仙台の優勝は叶わなかった。
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 GAME1、73-81で敗れた直後の会見で藤田弘輝ヘッドコーチ(以下藤田HC)は、「FE名古屋に勝つことがどれだけ難しいか忘れていた」と語った。レギュラーシーズンは4度の対戦があった。結果は1勝3敗。この試合では前半だけで54失点。ハーフタイムには「何点取られるつもりなのか」と選手たちに檄を飛ばした。B2屈指のタレント揃い、昨シーズンのタイトルホルダーや優勝経験者、帰化選手など選手層が豊富なチームと戦う難しさを痛感した藤田HCの表情は険しかった。

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 GAME2、#24ジャスティン・バーレルが足を負傷し一時ベンチに下がるなどアクシデントがあったものの「仙台らしく泥臭く戦う」という言葉通り、この日先発起用されていたベテラン#25荒尾岳などを中心にチーム一丸で戦い69-64というスコアで勝利を勝ち取った。まさに荒尾は、激しく泥臭くディフェンスするということを体現していた。敵味方を越え、彼のプレーや姿勢は観ている人の心に刺さったのではないかと思う。選手たちがチームのために献身的になって戦い、外国籍選手を中心に得点を重ねGAME3に持ち込んだのだ。

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 しかしクォーターファイナル、セミファイナル、さらにはファイナルと全て3試合を戦うことになった仙台。セミファイナル、ファイナルは敵地に乗り込んでの試合ということもあり疲労も蓄積されていた。「勝っても負けても最後の試合、大切に」と挑んだGAME3だったが、終始FE名古屋の強固なディフェンスに苦しんだ。残念ながら力尽きてしまった仙台は44-75で敗戦、準優勝となった。最後に交代しベンチに座った後の#5デビン・オリバーが頭を抱えている姿、控室に引き上げるバーレルの姿は印象的で目に焼き付いている。
 

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 戦いを終え「たくさんの試合を戦い抜いた選手たちを誇りに思う。すごくやり切ったと思うし悔いはない」と淡々と語った。「最高の仲間」とともに挑んだ今シーズン、GAME2終了後の会見で「この素晴らしいチームは、全てを最後までハードに出し切るチームであって欲しいし、そう思われたい」という指揮官の言葉がとても心に残った。その思いに選手たちも応えていた。藤田HCは誰よりもとても情熱的で愛が溢れるHCだと思う。23日には早速2022-23シーズンの契約継続が発表された。藤田HCはB1での経験もある。素晴らしいコーチとともに、B1で来シーズンどんな戦いを見せるのだろうか。

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 今シーズン、優勝は叶わなかったがもう一つの目標であるB1昇格は達成した。来シーズンは、強度やスピードなど全てにおいてB2よりも高いレベルで戦っていかなければならない。仙台はBリーグ初年度、B1に所属していた。その後降格を経験している。同じことを繰り返さないためにも「総合的なステップアップが必要」だ。一つ一つの積み重ねを大切に、強い想いを胸に戦っていく。

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 balltrip MAGAZINEのphotographerオガワブンゴは仙台のホームであるゼビオアリーナ仙台について「コート上が見やすく、選手たちが映える写真が撮影できる場所。黄色に染まるアリーナは圧巻だ。B2観客動員数1位であることが頷ける素晴らしいアリーナ」と話す。B1に東北地方のチームが増え、秋田ノーザンハピネッツとともにリーグを盛り上げてくれることはファンにとっても嬉しい。このファイナルも仙台から応援に駆け付け、選手たちを熱く後押ししていたファンの姿があった。来シーズンはB1の各地でナイナーズイエロー旋風を巻き起こして欲しい。そして、まだ訪れたことがない方もぜひ仙台89ERSホームへballtripして欲しいと思う。仙台の新たなステージへの挑戦が今から楽しみだ。

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文:木村英里
写真:オガワブンゴ

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