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[ERI’S FINDER]無観客試合で見つけた勝敗以外のもの

このコラムは、フリーアナウンサーの木村英里がブレ活(ブレずにサンダースを応援し続けるバスケットボールライフ)を送る中で見つけたこと、感じたことを綴る取材日記です。

川崎ブレイブサンダース対レバンガ北海道

苦渋の決断

Bリーグが下した「無観客で試合を行う」という判断。
そこに至ったのには、もちろん理解できる理由もあります。その反面、不安を抱えながらプレーをする選手たちのことを思うと複雑さもありました。今回の新型コロナウイルス問題、無観客試合についての感じ方、考え方は、人それぞれ。誰も否定をできないし、みなさんの決断や意見は理解でき尊重すべきものでした。

そんな中迎えた第28節。3月14日、雪降る中とどろきアリーナに着くと、当たり前ながら閑散としていました。「本当にここで試合があるのだろうか?」そんな気持ちで扉を開け、受付で消毒や検温などをしアリーナの中へ。普段とは全く異なる景色でした。もちろん一階席は無く、ベンチ向かいに横一列でメディア席が並べられたコートサイド。コート上では選手たちがシュート練習を行なっていました。

GAME1の試合前、突如試合開始時間が15分遅れることが伝えられました。その後、突然選手たちがロッカールームへと引き上げて行ったのです。そして、報道陣に伝えられた「試合中止」という言葉。北海道の選手3名が37度台前半の発熱があったことから、選手たちや試合に関わる方の安全を考慮し、対戦相手も含め迷惑をかけられないと、北海道より申し入れがあったとのことでした。

そして翌日、GAME2が開催される連絡は正午ごろチームに届いたそうです。GAME1が直前で中止となったことや、翌日の試合がどうなるのかわからなかった状況で、選手たちは難しい時間を過ごしたでしょう。

他チームでは、試合出場を見送った選手たちもいました。もちろん川崎の選手も同様に不安を抱えていましたが、「球団社長や北卓也GMへその思いは伝えて良い」と告げられていたそうで、ここでコミュニケーションを取り、川崎の選手全員がユニフォームを着てコートに立っていたことに敬意を表したいと思いました。
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商品価値

チームからは「やるからには全力で」そう指示があったと言います。それはもちろんプロだから。不安な気持ちは、コーチをはじめチームスタッフの誰もが持っていたと思います。それでもそう指示を出すのは、プロだから。しかし佐藤賢次HCも集中する雰囲気作りに気を配り、「細かいことは一切言わなかった」そうです。

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対戦相手は、緊急事態宣言が出された北海道。練習できる環境は整っているとは決して言えなかったでしょう。さらに集中できる状況でもなかったはず。それでも、試合を行った北海道の皆さんに対しても敬意を表するべきと思いました。勝敗は付きましたが、勝敗よりももっと大切なものがあったと感じました。北海道の内海知秀HCは「勝ち負けもあるが、選手たちは一生懸命やっているし、試合ができたこと、川崎さんにも感謝したい」と言葉を詰まらせ涙をこらえながらお話をされていました。その姿には、胸が締め付けられる思いがしました。

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試合後に北海道の折茂武彦選手が、「今後どういう判断になるかわからないがプロ選手として次の試合に備えたい」と語っていたことからも伝わってくるプロ意識。
篠山竜青選手も「無観客試合とは言え、映像を通して今日のゲームをたくさんの方に見ていただけたのは、プロのスポーツ選手としてやるべき仕事を果たせたのかな。北海道としてもこういう状況下で限られた人数で、出だしからハードにプレーをしてくれた。40分のゲームという商品価値をしっかり高く保てたのではないかと思う」と試合後に振り返っていました。
篠山選手の話を聞きながら、企業の選手からプロの選手へ、Bリーグ発足4シーズン目、この間に環境は目まぐるしく変化してきました。その中で着実に芽生え、根付いてきたプロとしての意識を、今回強く感じました。

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無観客試合でのデビュー

親日家の助っ人

この試合で篠山選手は復帰。「若干の違和感はある」そうですが、元気な姿を見られて一安心でした。

続いてコート上に現れたのは、背番号34。スペインからやってきたパブロ・アギラール選手です。
スペイン代表として2015年ユーロバスケットで優勝を経験。川崎優勝のために来日してくれたアギラール選手にお話を伺いました。

「ハジメマシテ」と、日本語でまず挨拶をしてくれたアギラール選手。複雑な状況でのデビュー戦について「選手、クラブ、スタッフにとって、厳しい状況だと思っていた。それでも一番大事なのは試合ができたこと」と語り、自身のプレーについては、「今日はいいパフォーマンスがそこまでできていない。これまで10ヶ月間、(怪我の影響で)実戦形式での試合に出ていなかった。ファンのいない会場に来てプレーをするのは、想像していなかった。それに対応するのも難しかった。シュートはあまり入らなかったが、自分でコントロールできるリバウンドやディフェンスで貢献しようと思った。体のコンディションは問題ない。この先、チームに馴染んでいけばオフェンスもついてくる。焦らずチームにフィットし試合勘を取り戻したい」と語っていました。

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3Qでは、ニック・ファジーカス選手とジョーダン・ヒース選手とのビッグラインナップも試していました。そのことについては「3人でコートに立つのはいい武器だと思う。自分自身が3番ポジションで出るということをすごく楽しめている。試合勘の波長が合ってくればビッグラインナップとしての精度も上がってくる」と期待を込めていました。

新婚旅行で日本を訪れていたほどの親日家。今回、来日した際もまず初めにもんじゃ焼きを食べたのだとか。

アギラール選手は、質問する私の目をしっかり見て会話をしてくれました。その目はとてもキラキラとしていて、一つの質問に対してとても丁寧にお話ししてくれます。そんなアギラール選手のプレーをもっともっと見てみたい、そう思いました。

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ERI’S FOCUS

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無観客試合だからこそ、観られたもの、聞こえたものも多くありました。
私の印象に残ったのは、藤井祐眞選手のシュートが外れて悔しがる声やファジーカス選手がフリースローを放った際に思わずもらした「Ah,short!」という呟き。
さらに誰より声を出しナイスプレーを見せた熊谷尚也選手を迎えるジャマール・ソープ選手の姿。

もちろん、バッシュの「キュキュッ」という音やドリブルの音などもたくさん聞こえました。そして、ボールがリングを通る時の「シュッ」という音が何よりも美しく感じました。

改めて、このような状況でもハードなプレーを見せてくれた両チームの選手わスタッフのみなさんは素晴らしかったと思います。ありがとうございました。

 
文:木村英里
写真:オガワブンゴ
 

木村英里 Eri Kimura
バスケの魅力にハマったフリーアナウンサー。テレビ静岡・WOWOWを経て現在はラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。川崎ブレイブサンダースファン。
twitter:@kimuraeri / Instagram:@39elly39

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